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大阪2児餓死事件

大阪2児餓死事件
場所 日本の旗 日本大阪市西区
日付 2010年6月9日
(母親が2児を閉じ込めて外出した日時)
2010年7月29日
(母親がいったん帰宅し2児の死亡を確認した日時)
2010年7月30日
(近隣住民の通報で警察官が遺体を発見した日時)
攻撃手段 食事を与えない
死亡者 2人
犯人 下村早苗
容疑 殺人罪
動機 子育てが面倒くさくなった
謝罪 あり
刑事訴訟 2012年3月16日懲役30年
大阪地方裁判所
2013年3月25日上告棄却
影響 事件が発生したマンションで月1回の交流会が行われるようになった。
管轄 大阪府警察(捜査一課西警察署)
大阪地方検察庁大阪高等検察庁
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大阪2児餓死事件(おおさかにじがしじけん)とは、2010年7月30日に発生した大阪府大阪市西区マンションで2児(3歳女児と1歳9ヶ月男児)が母親の育児放棄によって餓死した事件。

事件概要

2010年7月30日、「部屋から異臭がする」との通報で駆け付けた警察が2児の遺体を発見。死後50日ほど経っていた。なお遺体が発見されるまで「子供の泣き声がする」と虐待を疑う通報が児童相談所に何度かあったが発覚しなかった[1]。同日に風俗店に勤務していた2児の母親(当時23歳)を死体遺棄容疑で逮捕し、後に殺人容疑で再逮捕した[2]

被疑者

生い立ち

被疑者は三重県四日市市に生まれた。両親の離婚などで中学生時代は家出を何度も繰り返していた[3]。この頃、被疑者の父が、高校スポーツの指導者としてニュースの特集に出たことがあり、その当時中学生だった被疑者に対して、福澤朗が家に帰るよう促したことがある[4]。2006年12月、当時大学生だった男性(その後大学を中途退学し就職する)と結婚。2007年5月、20歳になった直後に第1子の長女を出産。2008年10月に第2子の長男を出産し、2009年5月に離婚した[3]。離婚は借金と自らの不倫が原因だったが、離婚を決める家族会議で「借金はしっかり返す」「家族には甘えません」「しっかり働きます」などの誓約書を書かされ、22歳で幼い2児を抱えるひとり親は養育費もない状態で家族を頼れない状況となり、児童扶養手当子ども手当も受給しなかった。この被疑者もまた幼少期に実母からネグレクトを受けていたうえ、中学生で輪姦体験での性被害もあり解離性障害の傾向もあったという。公的機関に1度子どもを預ける相談をしたが実施には至らなかった[5]

事件発覚まで

母親は離婚後、大阪市西区のマンション(母親の勤務先である風俗店が賃借していた物件、投資用ワンルームマンション)に引っ越したが、子供の世話をしなくなっていた。この時子供を残し、わずかな食料を置き交際相手と過ごすようになり長期間家を空けることもあった。

2010年6月9日頃、居間の扉に粘着テープを張った上に玄関に鍵をかけて2児を自宅に閉じ込めて放置し、同月下旬ごろに餓死させた。7月29日、勤務先の上司から「異臭がする」との連絡を受け、約50日ぶりに帰宅した際に子供の死亡を確認した。死亡を確認した母親は「子供たちほったらかしで地元に帰ったんだ。それから怖くなって帰ってなかったの。今日1ヶ月ぶりに帰ったら、当然の結果だった」と上司にメールを送信するも[6]、その後はそのまま交際相手と遊びに出かけてホテルに宿泊し、翌7月30日に逮捕されるまで過ごしていた。

裁判

母親は逮捕後、約5か月間の鑑定留置期間に精神鑑定を受け、刑事責任能力には問題無いとの結果が出たため、大阪地検殺人罪で起訴された[7]。なお、死体遺棄容疑は不起訴処分となった。

検察側は、母親が最後に家を出た際「冷蔵庫に食事がなかった」「子ども2人の衰弱を目の当たりにしていた」などの点を挙げ、母親に殺意があったとして、無期懲役を求刑した[8]。弁護側は「被告も育児放棄を受けた影響があった」とし子供に対する殺意はなく保護責任者遺棄致死罪にとどまるとした[8][9]。母親は「子供のことを今でも愛している」と話した[3]

2012年3月16日大阪地裁は母親は子供に対する「未必の殺意」があったと認定し、懲役30年の実刑判決を言い渡した[1]2012年12月5日大阪高裁も「生命が危険な状況で、放置すれば死亡すると認識できた」として一審判決を支持し、被告側の控訴を棄却した[10]。裁判は最高裁まで争われ、2013年3月25日に懲役30年が確定した[11]。その後、事件のあったマンションでは毎月一度、住人交流会が行われている。

その他

2013年に同事件を基にした映画『子宮に沈める』が緒方貴臣監督によって制作された。母親を伊澤恵美子が演じた。この映画は数年にわたり不定期で上映された[12]。また、この映画は児童虐待防止全国ネットワークが運営する「オレンジリボン運動」の推薦映画に認定された[13]

2019年5月には、山田詠美によって同じく同事件を基にした376ページに及ぶ書籍『つみびと』が発行された。

社会起業家の角間惇一郎はインターネット上の掲示板にて、風俗嬢として働き、ホストクラブ通いだった加害者に対する罵詈雑言が多くみられたことに触れている[14]

関連書籍

脚注

  1. ^ a b “大阪市・2幼児放置死事件”. Yahoo!ニュース. オリジナルの2013年5月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130514142402/http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/osaka_2_children_abandoning/ 2022年7月18日閲覧。 
  2. ^ “大阪、母親を殺人容疑で再逮捕 2幼児放置死事件で府警”. 共同通信社. 47NEWS. (2010年8月10日). オリジナルの2014年8月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140810010132/https://www.47news.jp/CN/201008/CN2010081001000622.html 2022年7月18日閲覧。 
  3. ^ a b c いいママになりたかった:大阪2児放置死事件/上 両親の「ネグレクト」 幼少期の体験、心の傷に 毎日新聞 2013年5月14日時点でのアーカイブ 2013年1月23日
  4. ^ 大阪二児遺棄事件 育児放棄母の父親らから事件の深淵聞く NEWSポストセブン 2012年3月10日
  5. ^ 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いて来たか 杉山春 朝日新書 ISBN 978-4022737434 2017年12月
  6. ^ 高裁も一蹴 2児放置・餓死の25歳ママが上告する「理由」 産経新聞 2012年12月22日
  7. ^ “母親を殺人罪で起訴へ 2幼児放置死で大阪地検”. 共同通信社. 47NEWS. (2011年2月1日). オリジナルの2011年4月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110415042631/http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011013101000942.html 2022年7月18日閲覧。 
  8. ^ a b “2幼児放置死、母親に無期求刑 大阪地裁”. 共同通信社. 47NEWS. (2012年3月12日). オリジナルの2014年6月20日時点におけるアーカイブ。. https://archive.ph/TPVpz 2022年7月18日閲覧。 
  9. ^ “25歳母、2審も殺意認定で懲役30年「子供の衰弱を目の当たりにしながら…」”. MSN産経west. (2012年12月5日). オリジナルの2016年1月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160101115053/http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/121205/waf12120511490008-n1.htm 2022年7月18日閲覧。 
  10. ^ “2幼児放置死、二審も懲役30年 元風俗店員 大阪高裁”. 共同通信社. 47NEWS. (2012年12月5日). オリジナルの2012年12月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20121208010901/http://www.47news.jp/CN/201212/CN2012120501001304.html 2022年7月18日閲覧。 
  11. ^ “大阪の2児放置死、母親の懲役30年確定へ 最高裁が上告棄却”. 日本経済新聞. (2013年3月28日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2702S_X20C13A3CC1000/ 2021年7月2日閲覧。 
  12. ^ 『子宮に沈める』公式サイト
  13. ^ “こども虐待防止「オレンジリボン運動」推薦映画『子宮に沈める』、11月9日(土)公開決定!予告動画公開中”. navicon. (2013年10月28日). https://navicon.jp/news/20573/ 2019年10月14日閲覧。 
  14. ^ 角間惇一郎『風俗嬢の見えない孤立』 879巻(初)、光文社〈光文社新書〉、2017年4月20日、34-35頁。ISBN 978-4-334-03984-4NCID BB23467939全国書誌番号:22893801 
  15. ^ 筑摩書房 ルポ 虐待 ─大阪二児置き去り死事件 / 杉山 春 著”. 筑摩書房. 2022年7月18日閲覧。
  16. ^ つみびと特設ページ”. 中央公論新社. 2022年7月18日閲覧。
  17. ^ つみびと -山田詠美 著”. 中央公論新社. 2022年7月18日閲覧。

関連項目

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