各国における夏時間各国における夏時間(かっこくにおけるなつじかん)では、各国の夏時間(英: summer time、米: daylight saving time、略: DST)の採用・実施状況について記述する。夏時間とは、1年のうち夏を中心とする時期に通常期よりも時計を進めて夕暮れの時刻を遅らせる制度のことである。典型的には、春から夏頃にかけて時計を1時間進める。サマータイムとも呼ばれる。 2022年現在[update]、サマータイムは北半球の夏の期間にヨーロッパおよび北アメリカのほとんどの国・地域とアジアの一部の国で、南半球の夏の期間に南アメリカおよびオセアニアの一部の国・地域で、それぞれ実施されている。また、過去にはその他の地域でも採用されていたことがある。 2023年現在の採用地域と実施期間
特に断りのない限り、上表に掲載したサマータイムの開始・終了時刻は、それぞれの時刻に切り替わる前の現地時刻を指す。時差は、サマータイムの開始時に付け加えられ、終了時に差し引かれる時間の長さを指す(単位は時間)。たとえば、アメリカ合衆国とカナダでは、サマータイムの開始時に現地時刻が2時から3時に切り替わり、終了時に2時から1時に切り替わる。時刻の切り替え日時は各地域のタイムゾーンに依存するため、これらの国々のすべての地域で一斉に時刻が切り替えられるわけではない。ただし、サマータイムを導入しているヨーロッパの一部では、各地域のタイムゾーンにかかわらず、ほぼすべての地域で1時00分 (UTC) に一斉に時刻が切り替わる。 モロッコは、西サハラの一部を統治していることもあり、季節的な日中の時間の変化とは関係なく、毎年時刻が変更される。同地の現地時刻は、ラマダーン前の日曜日の3時に1時間減じられ、ラマダーン後の日曜日の2時に1時間加えられる。 過去の実施記録
各国の夏時間の歴史アメリカ合衆国
アメリカでは1918年と1919年に各7か月間、夏時間が導入されたが、大変に不評のため廃止になった。その後第二次世界大戦中に資源節約目的で復活し、今に至る。1986年までは現地時刻で4月最終日曜日2時から10月最終日曜日2時までの間、それまでの時刻に1時間を加えたタイムゾーンを採用する「1966年方式」が主に使われていたが、その後は開始日は4月第1日曜日となり、2007年からは「包括エネルギー法案」の可決により期間が約1か月延び、開始日は3月の第2日曜日、終了は11月の第1日曜日となった。なお、議会で法案が通れば、その自治体は夏時間を使用しなくてもよいため、2008年現在、低緯度のハワイ州は州全体、アリゾナ州では大半の自治体で夏時間を採用していない。なお、2005年まで大半の自治体で夏時間を採用していなかったインディアナ州は、2006年から州全域で夏時間を採用している。 2018年以降、米国の複数の州で季節ごとの時刻の変更を廃止し、恒久的な夏時間を採用する法律が成立したが、これらの法律は連邦政府の承認がなければ発効しない[24]。各州は夏時間を実施するかどうかを自由に選択できるが、実施する場合は全国的な実施スケジュールに従わなければならず、標準時を変更する場合も連邦政府の承認が必要である。 2022年3月15日、日照保護法が米国上院を全会一致で通過した[25]。仮に下院を通過し、大統領が署名すれば、米国は1年中夏時間を実施することになる[26]。 イギリス
→詳細は「英国夏時間」を参照
ドイツに続いて、イギリスでは同じ年の5月21日から10月1日まで採用した。 欧州連合
欧州連合 (EU) は夏時間の開始日(3月の最終日曜日)と冬時間の開始日(10月の最終日曜日)を1998年に統一した。長らく運用が続けられてきたが、2018年2月8日、欧州議会は欧州委員会に対し、欧州連合におけるサマータイムを再評価するよう要請することを決議した[27]。2018年7月4日から8月16日にかけてオンライン調査を実施し、460万人のEU市民から回答を得た[28]。この調査は特にドイツで人気が高く、回答者の68%が同国に所在している結果となった[29]。回答者のうち、約84%が年に2回の時刻合わせを望んでいない[28]。この世論調査に基づき、2018年9月12日、欧州委員会は季節ごとの時刻の変更の廃止を提案することを決定した(指令2000/84/ECの廃止)[30]。この提案が有効となるためには、欧州連合理事会と欧州議会の両方が承認することを中心とした欧州連合の立法手続きを踏む必要がある。 欧州連合理事会は欧州委員会に対し、各国が今後の方針を決定する前に詳細な影響評価を行うよう要請した[29]。季節ごとの時刻の変更の廃止により、EU加盟国は夏時間か冬時間のいずれかを標準時として選択することとなった。夏時間制度は2021年をもって廃止する予定となっていたが[31]、2020年から新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、EU各国が流行に対処するため、夏時間廃止後の方向性の議論を進めることができず、2022年現在[update]、廃止に至っていない。 ドイツ
第一次世界大戦中のドイツ帝国が1916年4月30日から10月1日まで採用したのが始まりである。ドイツが第一次世界大戦中に導入し、廃止などを経てオイルショック後の1980年に再開したのは省エネが目的であった[32]。 稀な事例だが、2段階のサマータイムが実施された例がある。連合国占領下のドイツで1945年と1947年に実施された(de:Sommerzeit)。1945年の場合は、独ソ戦終了前から通常のサマータイムが実施されていたが、5月の独ソ戦終了まもなくから9月まで、ソ連占領地域とベルリンにおいて+2時間のサマータイムが実施され、当時サマータイムを導入していなかったソビエト連邦の首都モスクワと同じ時刻になった(通常のサマータイムは11月まで)。1947年の場合は、ドイツ全土において、4月6日に第1段階のサマータイム(+1時間)を開始、5月11日から6月29日まで2段階目(+2時間)を実施し、10月5日にサマータイムを終了した。 日本
→「日本標準時 § 夏時間(サマータイム)」も参照
日本では、占領軍の施政下にあった1948年(昭和23年) - 1951年(昭和26年)の間のみ実施されていた。 連合国軍占領期→詳細は「夏時刻法」を参照
日本において夏時間は、第二次世界大戦敗北後の連合国軍占領期にGHQ指導下で公的に導入され、1948年(昭和23年)4月28日に公布された夏時刻法に基づき、同年5月2日の0時から9月11日にかけて初めて実施された[33]。 以後、毎年5月(ただし、1949年(昭和24年)のみ4月)第1土曜日24時(=日曜日0時)から9月第2土曜日25時(=日曜日0時)までの間に夏時刻が実施されることとなったが、残業増加や寝不足を引き起こすなどとして不評を呼び、1951年(昭和26年)度はサンフランシスコ講和条約が締結された第2金曜日の9月7日で打ち切られ[33]、翌1952年(昭和27年)4月27日の占領終了と同月28日の条約発効による日本の主権回復に先立ち、夏時刻法は同年4月11日に廃止された。 なお、当時の人々やマスメディアの日本語表記は、サマータイムではなくサンマータイムだった[33]。 平成における議論過程前述の通り、日本での公的な夏時刻の実施は1948年から4回(4シーズン)だけで終わったが、1995年(平成7年)頃からは省エネルギーなどを名目としたサマータイムの再導入が一部議員を中心に検討され始めた。 衆参両院超党派の100名超の国会議員らにより2004年(平成16年)8月に「サマータイム制度推進議員連盟」が設立された。会長は第1次小泉内閣(小泉純一郎首相)の経済産業大臣だった平沼赳夫(経済産業省は電力などエネルギー分野を管掌)。2005年(平成17年)に法案提出の動きがあったができなかった。平沼自身は、郵政選挙で自民党を離党し、政治権力の中心から離れるとともに“反自民”の象徴となった。以降この議連による動きは止まったままである。 2007年(平成19年)春には、日本経済団体連合会(日本経団連)が自由民主党に対して夏時間の導入を提案した。同年8月1日から31日までの1か月間、日本経団連は経団連会館内で、始業・終業時刻を通常より1時間繰り上げる(早める)「サマータイム勤務」(エコワーク)を実施した。 福田康夫内閣(福田康夫首相)は地球環境(特に地球温暖化対策)と生活者の重視を旗印にしており、自由民主党は2008年(平成20年)4月に地球温暖化対策推進本部を立ち上げた。 会長は野田毅元自治相であり「(国民の)地球温暖化対策に対する意識変化を国民運動的に求めていく」として、サマータイムを政府のなすべき温暖化対策・環境対策の切り札として位置付けていた。2008年(平成20年)5月13日、自民党地球温暖化対策推進本部は、サマータイム法制化・完全導入への作業を本格的に開始した。 麻生内閣(麻生太郎首相)は2009年(平成21年)6月28日の李明博韓国大統領との日韓首脳会議後、「日韓同時にサマータイムを導入すれば経済効果が高い」と認識を示していた。 2009年(平成21年)9月9日に、鳩山由紀夫内閣下で、鳩山由紀夫首相との日韓首脳会議で、李明博韓国大統領が日韓同時導入を、韓国政府が提案する方向で検討していると発表した。 2020年に開催される東京オリンピックでは開催時期に猛暑が予想されることから、2018年(平成30年)7月には、組織委員会会長の森喜朗(元内閣総理大臣)が日本国政府に対して、サマータイムの導入を内閣総理大臣安倍晋三に申し入れ、導入の検討が開始された[34]。同年8月の時点では、2019年、2020年限定で6〜8月に2時間の時刻繰り上げを行うこととし、必要な法整備は超党派による議員立法により行うという案が与党内で取り沙汰されていた[35]。 しかし、情報技術機器や地震計のコンピュータプログラム変更には、実施に4〜5年かかるため、2020年には間に合わないと専門家は反対している[36]。2018年(平成30年)11月21日、自民党はサマータイムの導入を断念することを正式決定した[37]。 サマータイム制への賛否日本では、政府が過去において一般国民を対象として複数回にわたって「サマータイム(夏時刻)に関する世論調査」を行った[38]。前述の通り、日本では過去にサマータイム制を導入しながらも廃止した経緯がある。 総理府が1980年に実施した世論調査では、「賛成」が42%、「反対」が35だった[39]。1998年11月に実施された総理府広報室の調査では、「賛成」が54%、「反対」が25.2%、「わからない」20.8%となり、初めて賛成が5割を超えた[40]。2005年7月の内閣府世論調査では、サマータイム制度導入の賛否は、「賛成」が51.9%、「反対」が30.2%だった[41]。 NHKオンラインが2005年(平成17年)8月12日に実施したアンケート[42]では、反対派が賛成派をわずかに上回った。同じくNHKが2018年(平成30年)8月に実施した世論調査では、東京オリンピックの暑さ対策として「サマータイム」の導入に「賛成」が51%、「反対」が12%、「どちらともいえない」が29%であった[43]。同じく2018年(平成30年)8月の朝日新聞の世論調査によると「賛成」が53%、「反対」が32%、「その他・答えない」が15%となっている[44]。なお賛成多数だったNHKが2018年8月調査に対し、同年9月(以前からと調査方法同じ)のNHK世論調査にて、「賛成」26.8%、「反対」43.1%、「どちらともいえない」21.6%となった。1か月間で賛否が逆転している[45]。
季節的な時刻の変更を廃止する提案アイスランド、アゼルバイジャン、アルゼンチン、アルメニア、イラク、ウルグアイ、エジプト、カザフスタン、キルギス、クック諸島、サモア、ジャマイカ、ジョージア、スーダン、トルコ、ナミビア、バヌアツ、フィジー、フォークランド諸島、ブラジル、ベラルーシ、香港、マカオ、モンゴル、ロシアなど、多くの国・地域が、長年にわたって実施してきた毎年の時刻の変更を廃止している。そのうちの何カ国・地域かは通年夏時間を採用しており、これは「恒久的な夏時間」とも呼ばれる。 脚注注釈
出典
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