原子力艦再利用プログラム (Ship/Submarine Recycling Program, SRP ) は、原子力船 を処分するためにアメリカ海軍 が使用するプロセスである。同プログラムはワシントン州 ブレマートン のピュージェット・サウンド海軍造船所 でのみ実施される。しかし、同プログラムの準備は他の場所で行われる場合がある。
プログラム
SRPプログラム開始前の核燃料除去のため、上部構造物を撤去され除去設備が装着されたCGN-38 バージニア
SRPプログラムの開始に先立って、艦から核燃料 を取り出す必要がある。これは通常退役と同時に行われる。退役前は「合衆国 の船」(United States Ship) を意味する「USS」が艦名に付いているが、退役後は「USS」が外され「ex-Name」(元xxxx)と呼ばれる。潜水艦 の燃料棒 抜き取りは西海岸 の5つの施設で行われ、燃料抜き取り後の船体はピュージェット・サウンド海軍造船所 へ曳航される。再使用可能な設備は燃料と同時に取り外される。
使用済み核燃料はアイダホ州 アイダホ・フォールズ の67km北西に位置するアイダホ国立研究所 (Idaho National Engineering and Environmental Laboratory, INEEL) 内の海軍原子炉施設 (Naval Reactor Facility, NRF) に鉄道輸送され格納される。核燃料の再処理は行われない。
SRPプログラム専従となったピュージェット・サウンド海軍造船所でプログラムが開始される。潜水艦は船体を前部、原子炉コンパートメント、もしあればミサイルコンパートメント、そして後部の3つか4つの部分に切断される。ミサイルコンパートメントはSTART I に従って分解される。原子炉コンパートメントは両端を密閉され、はしけ および重量貨物車によってワシントン州 にあるエネルギー省 のハンフォード・サイト へ運ばれ埋め立て処理される。埋設のために掘られた溝は、原子炉保管区画の最も重要な密封エリアから少なくとも600年間は針の先ほども漏らさず、数千年間は漏洩が起きないと評価されている。
1991年まで、潜水艦の前部と後部は再接合して浮体保管所に係留されていた。処分方法としては、標的として海没させることを含めて複数考慮されていたが、いずれも経済的に問題があった。特に、環境保護局 (EPA) と沿岸警備隊 (US Coast Guard) からはポリ塩化ビフェニル (PCB) を初めとする様々な環境汚染物質を船体から除去するよう要請された。この要請に対応しつつ処分コストを削減するため、残りのセクションを再利用し、再使用できる部材は再生産に回されることになった。再利用の過程で危険あるいは有毒な廃棄物はすべて特定されて除去され、再使用可能な設備は撤去して在庫に入れられる。また、金属スクラップおよび他の材料は民間会社に売却されるかあるいは再使用される。全ての過程で利益をあげられる訳ではないものの、ある程度のコストが削減できる。このSRPプログラムによる潜水艦の処理には、1隻当たり2,500万-5,000万USドル を要する。
2005年の終わりまでに195隻の原子力潜水艦 が建造あるいは発注された(NR-1 深海潜行艇およびバージニア を含む)。最後のスタージョン級原子力潜水艦 、L・メンデル・リヴァーズ (USS L. Mendel Rivers , SSN-686) は2001年に退役し、スタージョン級の高度改修型であるパーチェ (USS Parche , SSN-683) は2004年に退役した。「自由のための41隻」の最後の1隻であるカメハメハ (USS Kamehameha , SSBN-642) は2002年に退役した。ロサンゼルス級原子力潜水艦 の退役は1995年に始まり、大きく損傷したバトンルージュ (USS Baton Rouge , SSN-689) が最初に退役する艦となった。さらに、数隻が建造された原子力巡洋艦 もプログラムに加えられた。それらの処理は進行中である。
アメリカ海軍が保有する原子力空母 のうち、世界初の原子力空母「CVN-65 エンタープライズ 」は2012年12月1日付で退役し、本プログラムに回された。
原子力巡洋艦
攻撃型原子力潜水艦
※ジョージ・ワシントン級原子力潜水艦 のいくつかは弾道ミサイル原子力潜水艦であったが、退役前に攻撃型原子力潜水艦に艦種変更されたため以下にリストする。
†:船体が記念艦 として保存されている。詳細は個々の記事を参照
‡:パーチェの日付は2004年度会計予算で公式に示された物。実際は10月19日まで作業は開始されなかった。
弾道ミサイル原子力潜水艦
※ラファイエット級原子力潜水艦 のいくつかは弾道ミサイル原子力潜水艦であったが、攻撃型原子力潜水艦に艦種変更、訓練用に係留され再利用プログラムの予定にない。
プログラムは進行中であり、このリストは不完全である。
サム・レイバーン (USS Sam Rayburn , SSBN-635) は訓練艦に改修され、繫留訓練艦 (Moored Training Ship) に艦種変更 (Sam Rayburn , MTS-635) された。サム・レイバーンの改修は1986年2月1日に始まり、1989年7月29日に訓練艦として最初の臨界を達成した。改修は推進主軸によって生成された力を吸収するメカニズムを含む特別な係留装置が取り付けられた。ダニエル・ウェブスター は1993年に2隻目の繫留訓練艦 (MTS-2/MTS-626) に変更された。繫留訓練艦はサウスカロライナ州 グースクリーク のチャールストン海軍兵器施設に係留される。サム・レイバーンは2014年まで繫留訓練艦として4年間隔で信頼性試験を受けながら活動予定である。