Share to: share facebook share twitter share wa share telegram print page

 

南スーダンの行政区画

南スーダンの州
States of South Sudan
カテゴリー連邦州
位置南スーダンの旗 南スーダン
10州、2行政区、1特別行政区(2020年)
行政州政府英語版
区分郡、基礎自治体
パヤーム英語版
ボーマ英語版

南スーダンの行政区分(みなみスーダンのぎょうせいくぶん)は、2020年時点でおよび2種類の行政区域および基礎自治体パヤームボーマの4層から成り立つ。また州のさらに上の区分として地方Region)が存在するが、歴史的な区分に基づくものであり、行政機能は有していない。

ここでは、主に第一級行政区画である州について説明する。

概要

連邦制を採り、遊牧民の多い南スーダンでは土地や家畜をめぐる争いはしばし起こり、行政区画が槍玉に上がることがある。一例を挙げると、2014年に設置されたピボール行政区(GPAA、ジョングレイ州内)は、民族の自治区の設立のため武装蜂起した反政府勢力と南スーダン政府の和平協定によって生まれたものである。2013年のクーデター未遂事件から始まったサルバ・キール・マヤルディ大統領(ディンカ族出身)とリエック・マチャル元副大統領(ヌエル族出身)の内戦では、お互いが出身民族を優遇するかのような行政区画へ変更を宣言する事態になった[1](両者の行政区画はキール政権マチャル派の項をそれぞれ参照)。

民族対立のほかに天然資源や政治的な問題が原因の場合もあり、時には州同士が都市の帰属を巡って争うなど[2]、同国で行政区画はデリケートな問題とされる。民族対立についてはスーダン遊牧民紛争英語版および南スーダンの民族紛争英語版も参照。

階層別数
名称
(年時点)
- 地方
Region
3
1 州、(特別)行政区
State, (Special) Administrative Area
10州3区
(2020)
2 郡、基礎自治体
County, Municipality
78郡
(2008)
3 パヤーム
Payam
516
(2008)
4 ボーマ
Boma

現在の州(2020年 -)

2020年以降の行政区画と歴史的地方
  バハル・アル・ガザール地方
  エクアトリア地方
  上ナイル地方

2020年2月15日、同国で継続していた内戦の和平プロセスの一環として、従来の32州は10と3つの行政区域(2行政区と1特別行政区)へ再編されることになった。これにより、州は2011年の独立時とほぼ同じとなった[3]。ただし行政区域に関しては両者で意見の食い違いが見られる[4]

2015年にサルバ・キール・マヤルディ大統領が独立当初の10州を解体し28州としたことに対して、野党やリエック・マチャル元副大統領率いる反政府勢力のSPLM-IOは反発。反対派は独立当初の10州へ戻すよう要求したが、一方キールは拒否し続けたため和平案の争点となっていた[5]

統計

名称 英語名 面積
(km2)
人口
(2008年国勢調査[6]
人口
(2020年投影人口[7]
北バハル・アル・ガザール州 Northern Bahr el Ghazal State 30,543.30 720,898 1,133,147
西バハル・アル・ガザール州 Western Bahr el Ghazal State 91,075.95 333,431 526,651
レイク州 Lakes State 43,595.08 695,730 1,196,068
ワラブ州 Warrap State 35,019.96 920,045 1,449,637
アビエイ特別行政区 Abyei Special Administrative Area 10,547.28 52,883 82,749
西エクアトリア州 Western Equatoria State 79,342.66 619,029 870,055
中央エクアトリア州 Central Equatoria State 43,033.00 1,103,557 1,750,021
東エクアトリア州 Eastern Equatoria State 73,472.01 906,161 1,583,049
上ナイル州 Upper Nile State 77,283.42 964,353 1,550,846
ユニティ州 Unity State 26,440.22 486,346 822,445
ジョングレイ州 Jonglei State 80,926.78 1,143,926 1,738,364
ピボール行政区 Pibor Administrative Area 41,654.05 214,676 326,202
ルウェン行政区 Ruweng Administrative Area 11,396.47 99,455 168,453

変遷

1994年以前

1994年 - 2015年

南スーダンの10州と、歴史的な3地方
  バハル・アル・ガザール地方
  エクアトリア地方
  上ナイル地方

1994年2月14日、行政区画再編に伴い現在の南スーダンに当たる地域には10の州(State)と86の地区(District)が設置される。2005年には現南スーダン政府の前身となる「南スーダン自治政府」が発足し、南部10州はその自治政府下になる。2011年の南スーダン共和国独立に伴い南部10州はスーダン共和国から分離し、南スーダンを構成した。

統計

# ISO コード 州名 State 州都 面積
(km2
人口
(2008年国勢調査[6]
人口
(2015年投影人口[7]
1 SS-EC 中央エクアトリア州 Central Equatoria ジュバ(Juba) 43,033.00 1,103,557 1,462,604
2 SS-EE 東エクアトリア州 Eastern Equatoria トリット英語版(Torit) 73,472.01 906,161 1,274,685
3 SS-JG ジョングレイ州 Jonglei ボル(Bor) 122,580.83 1,358,602 1,753,273
4 SS-LK レイク州 Lakes ルンベク(Rumbek) 43,595.08 695,730 963,542
5 SS-BN 北バハル・アル・ガザール州 Northern Bahr el Ghazal アウェル(Aweil) 30,543.30 720,898 955,345
6 SS-UY ユニティ州 Unity ベンティーウ英語版(Bentiu) 37,836.69 585,801 804,703
7 SS-NU 上ナイル州 Upper Nile マラカル(Malakal) 77,283.42 964,353 1,281,365
8 SS-WR ワラブ州 Warrap クアジョク英語版(Kuajok) 45,567.24 972,928 1,283,620
9 SS-BW 西バハル・アル・ガザール州 Western Bahr el Ghazal ワーウ(Wau) 91,075.95 333,431 440,009
10 SS-EW 西エクアトリア州 Western Equatoria ヤンビオ英語版(Yambio) 79,342.66 619,029 759,884

2015年 - 2020年

2017年以降の南スーダンの州
2015年 -2017年の南スーダンの州

2015年10月、キール大統領は行政区画を従来の10州から28州(State)に再編を発表[8]。28州は歴史的な3地方(バハル・アル・ガザール地方、エクアトリア地方、上ナイル地方)にそれぞれ属している。スーダンと領有権問題のあるアビエイ郡(旧州ではワラブ州に属していた)はどの新州にも属していない[9]

この大統領令について、野党やリエック・マチャル率いる反政府勢力(SPLM-IO)などは反対の立場を採った。現行の憲法英語版では大統領令で行政区画の変更はできないとされており「憲法違反」に当たることや、また同年8月に結ばれた内戦の平和協定の違反となること、などである[10]。こうした反対意見に対して、キールは議会に対して今回の大統領令の承認を求めた[11]。11月に議会はキールの要求を認め、大統領へ新州創設やそれに伴う知事・議員の任命権を与えた[12]

2017年1月14日、キール大統領は28州を32州へ増やす大統領令を発表。これによってビエー州(旧称東部ビエー州)からアコボ州が、ラトゥジョール州からマイゥート州が、グブドゥウェ州からタンブラ州が分離し、東部ナイル州が廃止され中央上ナイル州北部上ナイル州に分割され、一部州境が変更された。また一部の州の改名が行われた[13]。この決定についても反政府勢力SPLM-IOは反対声明を発表。和平プロセスの停滞や地域紛争、ひいては連邦制の崩壊へ繋がりかねないと非難した[14]

一連の州設置は民族紛争の解決という理由もあったが、一方でキール大統領の氏族であるディンカ族の優遇する恣意的な分割であったという意見もある[1]

  • 歴史的区分別州数[15][16]
    • 上ナイル地方 - 13州
    • バハル・アル・ガザール地方 - 10州
    • エクアトリア地方 - 9州
# 英語名 州都 地方 郡数
1 アコボ州 Akobo State アコボ英語版 上ナイル 1
2 アマディ州 Amadi State ムンドゥリ エクアトリア 3
3 アウェル州 Aweil State アウェル バハル・アル・ガザール 2
4 東アウェル州 Aweil East State ワニュジョク英語版 バハル・アル・ガザール 1
5 ビエー州
(旧称東部ビエー州)
Bieh State
(Eastern Bieh State)
ワット英語版 上ナイル 2
6 ボーマ州 Boma State ピボー英語版 上ナイル 2
7 中央上ナイル州 Central Upper Nile State マラカル 上ナイル 4
8 東部レイク州 Eastern Lakes State イロル英語版 バハル・アル・ガザール 3
9 ファンガク州
(旧称西部ビエー州)
Fangak State
(Western Bieh State)
アヨドゥ英語版 上ナイル 2
10 ファショダ州
(旧西部ナイル州)
Fashoda State
(Western Nile State)
コドク 上ナイル 2
11 グブドゥウェ州 Gbudwe State ヤンビオ英語版 エクアトリア 3
12 ゴグリアル州 Gogrial State クアジョク英語版 バハル・アル・ガザール 2
13 ゴク州 Gok State クエイベトゥ バハル・アル・ガザール 1
14 イマトン州 Imatong State トリトゥ英語版 エクアトリア 4
15 ジョングレイ州 Jonglei State ボル 上ナイル 3
16 ジュベク州 Jubek State ジュバ エクアトリア 1
17 カポエタ州
(旧称ナモルニャン州)
Kapoeta State
(Namorunyang State)
カポエタ英語版 エクアトリア 4
18 ラトゥジョール州 Latjoor State ナシル英語版 上ナイル 2
19 ロル州 Lol State ラガ英語版 バハル・アル・ガザール 3
20 マイゥート州 Maiwut State マイゥート英語版 上ナイル 3
21 マリディ州 Maridi State マリディ英語版 エクアトリア 2
22 北部リエチュ州 Northern Liech State ベンティウ英語版 上ナイル 4
23 北部上ナイル州 Northern Upper Nile State レンク 上ナイル 3
24 ルウェン州 Ruweng State パリアン 上ナイル 2
25 南部リエチュ州 Southern Liech State レール英語版 上ナイル 3
26 タンブラ州 Tambura State タンブラ英語版 エクアトリア 2
27 テレケカ州 Terekeka State テレケカ英語版 エクアトリア 5
28 トンジェ州 Tonj State トンジェ英語版 バハル・アル・ガザール 3
29 トゥィク州 Twic State マイェン=アブン バハル・アル・ガザール 1
30 ワーウ州 Wau State ワーウ バハル・アル・ガザール 2
31 西部レイク州 Western Lakes State ルンベク バハル・アル・ガザール 4
32 イェイ川州 Yei River State イェイ エクアトリア 4

下位行政区画

2008年国勢調査時の郡

州の下には郡(カウンティ、County)および郡と同格の基礎自治体(Municipality)がある。2008年の国勢調査では78郡であったが、その後は増加。だが2020年の州再編に伴い、郡も独立当初へ戻されることが決まった[3]。スーダン共和国時代では地区(District)と呼ばれていた。

郡の下にはパヤーム英語版と呼ばれる村や町の共同体がある。2008年の国勢調査ではパヤームは516存在した[17]

最下層にはボーマ英語版が設置されている。規模は様々で、ある程度の村から構成される。1パヤームには平均4.2のボーマが所属している。

備考

SPLM-IOの21州
  • リエック・マチャル率いる反政府勢力(SPLM-IO)は2014年12月22日に州を21へ再編することを宣言[18]し、2015年1月1日には独自の「州知事」を任命[19]。また下位区分である郡についても同様に新設を宣言し、郡知事を任命している[20]。ただし南スーダン政府はこれらを承認していない。以下はSPLM-IOが主張する州の一覧である。
  1. ファショダ州(Fashoda)
  2. アダー州(Adar)または北東上ナイル州(North East Upper Nile)
  3. ソバト州(Sobat)
  4. リエチュ州(Lich)
  5. ジョングレイ州(Jonglei)
  6. ビエー州(Bieh)
  7. ポウ州(Phow)
  8. ピボール州(Pibor)
  9. カポエタ州(Kapoeta)
  10. イマトン州(Imatong)
  11. 中央エクアトリア州(Central Equatoria)
  12. イェイ川州(Yei River)
  13. 中西エクアトリア州(Mid-West Equatoria)
  14. 西エクアトリア州(Western Equatoria)
  15. ワラブ州(Warrap)またはトンジェ州(Tonj)
  16. ロル州(Lol)
  17. レイク州(Lakes)
  18. ルンベク州(Rumbek)
  19. 北バハル・アル・ガザール州(Northern Bahr el Ghazal)
  20. ワーウ州(Wau)
  21. 西バハル・アル・ガザール州(Western Bhar el Ghazal)またはラガ州(Raga)

この州区分は英埃領時代の地区に基づいているとされているが[4]、一方でマチャルの出身民族であるヌエル族を優遇したものという意見がある[1]

  • 2020年2月9日、政府間開発機構(IGAD)が州問題解決のため、23州へ再編することをキール政権へ提案した。しかしキールはこの提案を拒否している[21]
  • 帰属問題を抱える3つの地域は、以下のように所属する州が変更されている(南スーダンの実効支配下にない場合もある)
地域 領有権を主張する国家
2015年まで 2015年 - 2020年 2020年
イレミ・トライアングル  ケニア
エチオピアの旗 エチオピア
東エクアトリア州 カポエタ州
(ナモルニャン州)
東エクアトリア州
カフィア・キンギ英語版 スーダンの旗 スーダン 西バハル・アル・ガザール州 ロル州 西バハル・アル・ガザール州
アビエイ スーダンの旗 スーダン ワラブ州 単独の特別行政区へ変更

関連項目

脚注

  1. ^ a b c Map analysis: Ethnic balance to change if 28 states approved”. Radio Tamazuj (2015年11月22日). 2020年3月8日閲覧。
  2. ^ Koma Community torn between two states of Maiwut & N. Upper Nile”. eye radio. 2020年3月8日閲覧。
  3. ^ a b Breaktrhough:South Sudan government resolves return to 10 States”. chimpreports.com (2020年2月15日). 2020年2月17日閲覧。
  4. ^ a b South Sudan ministers endorse return to 10 states”. en:The EastAfrican (2020年2月20日). 2020年3月8日閲覧。
  5. ^ South Sudan President Offers Key Compromise for Peace”. ボイス・オブ・アメリカ (2020年2月15日). 2020年2月17日閲覧。
  6. ^ a b South Sudan/Administrative units at the Wayback Machine (archived 2017年2月1日)
  7. ^ a b [https://web.archive.org/web/20181222225323/http://www.ssnbss.org/sites/default/files/2016-08/population_projections_for_south_sudan_by_county_2015_2020.pdf Population projections for South Sudan by County 2015 - 2020] at the Wayback Machine (archived 2018年12月22日)
  8. ^ “Kiir and Makuei want 28 states in South Sudan”. Radio Tamazuj. オリジナルの2015年12月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151208183221/https://radiotamazuj.org/en/article/kiir-and-makuei-want-28-states-s-sudan 
  9. ^ Full list of Kiir's proposed new 28 states in S Sudan”. radio tamazuj (2015年10月3日). 2016年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月18日閲覧。
  10. ^ Is Creation of New States in South Sudan Legal?”. ボイス・オブ・アメリカ (2015年10月5日). 2018年2月18日閲覧。
  11. ^ Kiir pressured into taking decree to parliament for approval”. radio tamazuj. 2018年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月18日閲覧。
  12. ^ South Sudan’s Kiir appoints governors of 28 new states”. sudantribune (2015年12月25日). 2018年2月18日閲覧。
  13. ^ South Sudanese President creates four more states”. sudantribune.com (2017年1月16日). 2017年12月21日閲覧。
  14. ^ S. Sudan armed opposition condemn creation of 7 new states”. sudantribune (2017年1月17日). 2018年2月18日閲覧。
  15. ^ The 32 states of the Republic of South Sudan”. hotinjuba.com (08-29-2017). 2017年12月21日閲覧。
  16. ^ The 32 Federal States of the Republic of South Sudan”. paanluelwel.com (2017年1月22日). 2017年12月21日閲覧。
  17. ^ Population Projections for South Sudan by Payam from 2015 - 2020” (pdf). 南スーダン国家統計局 (2015年4月1日). 2018年2月18日閲覧。
  18. ^ S. Sudanese in Uganda welcome rebel formation of 21 states”. Dudan Tribune (2015年1月8日). 2018年2月18日閲覧。
  19. ^ Machar appoints top rebel command, state governors”. Sudan Tribune (2015年1月2日). 2018年2月18日閲覧。
  20. ^ New county commissioners in rebel Bieh State”. radio tamazuj (2015年4月16日). 2018年2月18日閲覧。
  21. ^ South Sudan government rejects IGAD proposal to establish 23 states”. sudantribune.com (2020年2月10日). 2020年2月17日閲覧。

外部リンク

Kembali kehalaman sebelumnya