世界の疾病負荷 (WHO、2019年)[ 2]
順位
疾病
DALYs (万)
DALYs (%)
DALYs(10万人当たり)
1
新生児疾患
20,182.1
8.0
2,618
2
虚血性心疾患
18,084.7
7.1
2,346
3
脳卒中
13,942.9
5.5
1,809
4
下気道感染症
10,565.2
4.2
1,371
5
下痢 性疾患
7,931.1
3.1
1,029
6
交通事故
7,911.6
3.1
1,026
7
COPD
7,398.1
2.9
960
8
糖尿病
7,041.1
2.8
913
9
結核
6,602.4
2.6
857
10
先天異常
5,179.7
2.0
672
11
背中と首の痛み
4,653.2
1.8
604
12
うつ病 性障害
4,635.9
1.8
601
13
肝硬変
4,279.8
1.7
555
14
気管、気管支、肺がん
4,137.8
1.6
537
15
腎臓病
4,057.1
1.6
526
16
HIV / AIDS
4,014.7
1.6
521
17
その他の難聴
3,947.7
1.6
512
18
墜死
3,821.6
1.5
496
19
マラリア
3,339.8
1.3
433
20
裸眼の屈折異常
3,198.1
1.3
415
下痢 (げり、英 : diarrhea )は、健康 時の便 と比較して、非常に緩いゲル (粥 )状・若しくは液体 状の便が出る状態である[ 3] 。主に消化 機能の異常により、人間 を含む動物 が患う症状であり、その際の便は軟便(なんべん)、泥状便(でいじょうべん)、水様便(すいようべん)ともいう。東洋医学では泄瀉(泄は大便が希薄で、出たり止まったりすること。瀉は水が注ぐように一直線に下る)とも呼ばれる。世界では毎年17億人が発症し、また毎年76万人の5歳以下児童が下痢により死亡している[ 3] 。発展途上国 では主な死因 の1つとなっている[ 4] 。
軟骨魚類 ・両生類 ・爬虫類・鳥類 および一部の原始的な哺乳類 は、下痢とよく似た軟らかい便を排泄するが、それらの排泄を指して「下痢」とは呼ばない。それらの生物は、消化器官の作りが原始的であったり、全排泄(出産 や産卵 をも含む)を総排泄腔 で行うことから、便の柔らかいことが常態である。
定義
下痢は、消化吸収能力の機能低下や、毒物 の服用、何等かの感染症 、薬剤の副作用、内分泌疾患によって発生する便が泥状や水様の症状である。多くの場合、排便回数の増加を伴う[ 5] 。瀉下薬 (下剤)の服用に伴い生じる下痢様症状は除外する。
下痢症状の継続期間から以下に別けられる。
発症から2週間以内のものを急性下痢[ 5] 、ウイルス性のものである可能性が高く、ほとんどの場合、自然に治癒する。
発症から2週間から4週間以下のものを持続性下痢[ 3] [ 5]
発症から4週間以上のものを慢性下痢[ 5]
便が非常に柔らかくなる際に合併する主な症状は、
下痢の原因に直接関係のある
副次的に生じる
などが挙げられる。
特に水様便に伴う脱水症状 により重篤な状態に陥ることもある。
便の状態
便の状態は、ブリストル・スケール により評価する[ 6] 。
ブリストル・スケール
状態
解説
1 コロコロ便
硬くてコロコロのウサギ糞状の便
2 硬い便
ソーセージ状ではあるが硬い便
3 やや硬い便
表面にひび割れのあるソーセージ状の便
4 普通便
表面がなめらかで柔らかいソーセージ状、 あるいは蛇のようなとぐろを巻く便
5 やや柔らかい便
はっきりとしたしわのある半分固形
6 泥状便
境界がほぐれて、フニャフニャの不定形の小片便、泥状の便
7 水様便
水様で、固形物を含まない液体状の便
疫学
2004年の100,000人あたりの下痢の障害調整生命年 (DALY)[ 7] データなし
500未満
500-1000
1000-1500
1500-2000
2000-2500
2500-3000
3000-3500
3500-4000
4000-4500
4500-5000
5000-6000
6000以上
2004年には世界で約25億人が下痢に罹患し、150万人の5歳以下の子供が死んでいる[ 1] 。これらの患者の半分以上がアフリカ及び南アジアに在住している[ 1] 。20年前には500万人に1人が毎年死亡していたが現在では改善しつつある[ 1] 。これらの年代では、下痢の死因は全体の16%を占め、肺炎 の17%の死因に次いで第2位の死因となっている[ 1] 。
原因
通常、便は大腸 内にて水分 やミネラル を吸収 された上で排出されるが、何らかの原因で水分を多分に残したまま便意を催して排便 されることがある。浸透圧により、腸壁 から腸管 内に水分が排出される。これが下痢である。
治療方針を決定するため原因鑑別を行う。
腹痛を伴わない、何らかの摂取物や疾病による症候としての下痢(機能性下痢)としては[ 9] 、
食物起因性、薬剤起因性、乳糖不耐性、胆汁酸吸収不良、セリアック病、ランブルべん毛虫症、慢性膵機能不全、クローン病、顕微鏡的大腸炎、小腸内細菌の異常増殖、全身疾患に伴う下痢、腸管スピロヘータ
下痢を伴う全身疾患の例[ 9] 、
内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能亢進症、アジソン病)
ホルモン.生理活性物質産生腫瘍(カルチノイド症候群、WDHA症候群、ゾリンジャー=エリソン症候群、甲状腺髄様癌)
免疫不全状態(AIDS、低ガンマグロブリン血症 )
心不全
食物アレルギー
吸収不良症候群
蛋白漏出性胃腸症
感染症
感染性の下痢は、ウイルス、細菌、寄生虫など多くの原因がある[ 11] 。感染性下痢はよく胃腸炎 に関連づけられる[ 12] 。
成人の下痢で最も一般なのはノロウイルス であり[ 13] 、5歳以下児童の下痢で最も一般なのはロタウイルス である[ 14] 。さらにアデノウイルス タイプ40,41や[ 15] 、アストロウイルス による感染性下痢も一般的である[ 16] 。
また赤痢 、コレラ 、病原性大腸菌 などによる感染症 や、クリプトスポリジウム といった病原性原虫 や寄生虫 の寄生でも発生し、最悪の場合は死 に至る。
吸収不良
小腸、膵臓の障害により、栄養分の吸収が十分にできないことによる。
炎症性腸疾患
過敏性腸症候群
そのほか
病態
脱水症状は特に細胞外液脱水になり、塩分 などのミネラル 分などの消耗も起きるので電解質代謝異常 を来す。便 は通常アルカリ性 なので体液の酸アルカリ平衡 が酸性 に向かいアシドーシス となって、体液が酸性に傾きアシデミアになりやすい。これは嘔吐 の際に、酸性の胃液 を吐くため平衡がアルカリ性に向かいアルカローシスになって、体液がアルカリに傾くアルケミアになりやすいことと対比するとわかりやすい。また、脱水が高度になると循環血流量 が減少するため、多臓器不全 (腎不全 など)やショック 、意識障害 を招くこともある。
また、消化管穿孔性疾患に伴う腹膜炎 は、頻回の便意 をもよおすことがある[ 17] [ 18] [ 19] 。
管理
補水
経口補液を受けるコレラ患者
下痢の際には通常より多くの水分が失われるため、それを補填するために経口 または輸液により水分補給を行う。経口の場合は小腸で水分が吸収される経口補水液 が有効である。
医薬品
原因が食中毒や感染症 や消化管の器質的な疾患に起因する場合、原因に対する対症療法が行われる。食中毒、感染症、消化管の器質的な疾患に該当しない下痢の場合は止瀉薬 が処方される。また、止瀉薬と乳酸菌製剤 が併用される事もある。
なお、食中毒などの感染症に伴う下痢は本来は病原体や毒素を速やかに排出する防衛作用であり、下痢止め処置はかえって病状の悪化を招く危険があるとの専門家の指摘がある[ 20] 。
脚注
^ a b c d e “whqlibdoc.who.int ” (PDF). World Health Organization . 2012年7月19日 閲覧。
^ Global health estimates: Leading causes of DALYs (Excel) (Report). 世界保健機関 . 2020年12月. Download the data > GLOBAL AND BY REGION > DALY estimates, 2000–2019 > WHO regions. 2021年3月27日閲覧 。
^ a b c Diarrhoeal disease Fact sheet N°330 . World Health Organization (Report). April 2013.
^ “下痢症について (ファクトシート) ”. 厚生労働省 検疫所 (2017年5月). 2020年11月16日 閲覧。
^ a b c d 小林健二、「下痢止めはいつ投与する?」JIM., No.18(9), doi :10.11477/mf.1414101515
^ ブリストル便性状スケール(BSスコア) ヤクルト中央研究所
^ “Mortality and Burden of Disease Estimates for WHO Member States in 2004 ” (xls). World Health Organization . 2012年7月19日 閲覧。
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関連項目
外部リンク