マンホールマンホール(英: manhole)は、地下の管渠内で点検、調査、清掃、修繕など維持管理を行う人が出入りするための設備[1][2][3]。地下の管渠の起点のほか、合流部、屈曲部、勾配や管径が変化する箇所、段差がある箇所、長い管の中間部など維持管理上必要な箇所に設置され、管渠を接合して連絡する機能を持つ構造物である[1][2][4]。なお、例外的に人の出入りが出来ない小型マンホールに分類されるものもある[5]。 専門的には「人孔」という[2][4]。また「潜孔」という訳語もある。 概要マンホールは斜壁、直壁、副管、底版等から構成され、通常は縦孔である[3]。しかし、直上に出入口を設置できない場合に側方に歩道を開いて設置する側面人孔のような特殊なものもある[4]。 下水道の管路施設としては、円形と矩形があり、一般的な円形のものは最小で内径90cm、120cm、150cmとあり、それぞれ1号、2号、3号マンホールと名付けられている[1]。なお、マンホールの代用として設置された小型のものに燈孔(ランプホール)があり、灯火や反射鏡を垂らして検査を行ったり、洗浄用のホースを通したり、換気を行うための設備である[4][6]。なお、寒冷地では街路の雪を下水渠に排雪するため雪孔を設ける場合もある[4]。 通信分野では通信ケーブルの敷設や接続などのために地下に設けられる上床版を有する10メートル未満の構造物をいい、10メートル以上のものは「とう道」と呼び区別する[7]。マンホールと比較して小型で上床版がないものはハンドホールという[7]。 manholeという英単語は、man(人)とhole(穴)を組み合わせた語である。アメリカ合衆国カリフォルニア州サクラメントでは1990年以降、マンホールの公的な名称として「メンテナンス・ホール (maintenance hole)」を使用している[8](ポリティカル・コレクトネスを参照)。 用途下水道施設標準マンホール、組立マンホール、特殊マンホール、下水道用レジンコンクリート製マンホール、小型マンホールがある[5]。材質はレジンコンクリートや塩化ビニル製もあるが、多くはコンクリート製である[1]。 日本では災害時、下水道に通じるマンホールにトイレを設営し、断水・損壊した家屋内トイレを代用する「マンホールトイレ」が開設される[9]。 通信用施設建設工法による分類では、現場で鉄筋コンクリートを打設する現場打ちマンホールと、分割したパーツを現場に運んで組み立てるブロックマンホールに分けられる[7]。材質では鉄筋コンクリートマンホールとレジンコンクリートマンホールに分けられる[7]。 蓋→詳細は「マンホールの蓋」を参照
マンホールは地表開口部を有するものであるが蓋の有無を問わない[3]。しかし、通常、マンホールの開口部には人が誤って落ちないように蓋がしてある。蓋は、風で飛ばされたり、盗難されたり、勝手に開けて中に入られたりするのを防ぐ目的、また、上に車両などの重量物が乗っても耐えるために鉄で作られている(鋳鉄製が多い)。形状は円形が多いが、これは蓋が穴の中に落ちないようにするためである[2]。 マンホールのふたの付加機能として、浮上防止、かぎ構造、転落防止などの機能が付けられる[10]。大量の雨水が管内に流れ込んできたときに空気の逃げ場がないと蓋が飛んでしまうため、予め蓋にはガス抜き用の穴が開いている[2]。 蓋の表面は、車などが通行する場合に滑ることを防止するため凸凹がある。単なる凸凹ではなく意匠としての紋様が描かれていることが多い。管理者が自治体の場合、その自治体の花や郷土芸能などの様子が描かれていたり、市章が入ったりしている。ペンキ等で彩色されている場合もある。 保守管理破損による事故マンホールについては硫化水素ガスの発生などによる下水道構造物に特有の生物化学侵食(コンクリート腐食)もあるため維持管理が問題となる[5]。マンホールが破損すると、道路陥没、人身事故、交通阻害、下水道の使用中止、下水の流出による地下水や土壌の汚染、悪臭物質の発散、有害ガスの噴出などの影響が出る[5]。 内部作業の事故マンホール内部にはガス等(特に窒素、二酸化炭素や硫化水素)が溜まることがあり、そのためマンホール内部での作業のために中に入った作業員が酸欠やガス中毒等の症状に陥り、最悪の場合死亡することもある。こういった事態を回避するため、マンホールに入る際には事前にガス検知器等で内部の状態を確認することが必要だが、必ずしも徹底されているとは言いがたく、日本では年に数件程度の事故が発生している[11]。 蓋をめぐる事故
マンホールチルドレンモンゴルなど社会福祉が不十分な国では、保護者を失ったり家出したりした子供が、雨露をしのげる地下坑に住み着き「マンホールチルドレン」と呼ばれることがある[18]。 脚注
参考文献関連項目
外部リンク |