スリッパスリッパ (英: slipper) は、履物の種類で、「スリップ」の名のとおり、足をするりと滑らすように入れて履ける履物である。 そのような意味の言葉なので、実際の形状はさまざまで例外も多いが、概して以下のような特徴がある。踵部分の高さがまったくないか、あっても踝より低い。留め金や結び紐などはない。ヒールはないか、あっても低い。足の前側部分のみを覆う。スリッパには足先まで完全に覆っているものと足先の指部分が少し開いているものとがある。サンダルは一見スリッパに似ているが、足先も踵も覆うという点では靴と同じで、ただし紐やバンドでできていて隙間が多いということである。ただし、ビーチサンダルのようなスリッパとも言えるサンダルや、オペラスリッパ (英: opera slipper) 、アルバートスリッパのようなサンダルや靴とも言えるスリッパもあり、実際は重なる部分が多い。革靴風のスリッパもあり、踵や靴紐が存在し、踵を覆う部分や内側も外側と共色のスリッパやサンダルもあり、社内で勤務する会社員に利用されている アメリカのスリッパアメリカのスリッパは、日本のスリッパよりも意味が広く、『リーダーズ英和辞典』は「留め金やひもがなく、深さがくるぶしよりも低い室内履きの総称」としている。深さがくるぶしより高いが、それ以外はスリッパの定義にあたるものを「slipper boot(s)」と称する(日本では「ルームブーツ」と呼ぶことが多い)。有名なシンデレラの「ガラスの靴」は英語では「glass slippers」だが、実際には屋内用のハイヒールを意味する。1939年の映画『オズの魔法使』のルビーの靴も英語では「ruby slippers」である。 日本の屋内用スリッパ日本で広く使われている屋内用スリッパは、英語圏では風呂場用のバススリッパ (英: bath slipper) や寝室用のベッドルームスリッパ (英: bedroom slipper) としてよく使われている物で、かかとを覆う部分やヒールがない。 足裏より一回り大きく裁断された下底の前方に、「ハネ」と呼ばれる足の甲を覆う部分が取り付けられている。 かつては表面が人工皮革で覆われたスリッパが多く、トイレや公共施設などで使用されていたが、現在では布地で覆われているスリッパも多くなり、畳や竹などで覆われたものも普及している。 スリッパの形式は、製造過程の違いにより「吊込タイプ」と「外縫タイプ」に分けられる。吊込タイプはスリッパの周りを先に作り、後から中底を取り付け、外縫タイプはスリッパの上方を先に作り、後から下底を取り付ける。 歴史オリエントが起源とされており、ヨーロッパで15世紀から見られる。室内履きを意味する英単語「slipper」は『英語語源辞典(研究社)』によると、1399年の記録がある[1]。 『日本経済新聞』によると、徳野利三郎が横浜居留地に住む外国人の依頼で、1868年に日本で初めて製作したといわれている。徳野の孫からの聞き取りに基づき、松永はきもの資料館の学芸員が復元している。また、1867年には、福沢諭吉が著書『西洋衣食住』で欧米の「上沓」「スリップルス」を紹介している[2][3]。 また、日本初の洋靴メーカーである伊勢勝造靴場により、1873~77年ごろに発行された日本最古とされる靴カタログには「ウハ(上)靴」が掲載されている[1][4]。 国内で生産は山形県河北町に集中しており、町では「かほくスリッパ」としてブランド化している[5]。 スリッパという呼び名は、江戸末期にシーボルトが日本に伝えた「上沓(スリップルス)」から来ているという説がある。 なお、オートレーサーは、コーナリングで路面に接する左足のブーツの下に、鉄スリッパ(鉄のスリッパ)を履いてレースに臨む[6]。 脚注
参考文献
関連項目 |