スプリッギナ
S. floundersi の化石。目盛は1 mm間隔。
分類
学名
Spriggina floundersi Glaessner , 1958[ 1]
スプリッギナ (Spriggina ) は、エディアカラ生物群 に属する初期の動物 の一つ[ 2] 。化石 は南オーストラリア州 のエディアカラ紀 後期の地層から産し、南オーストラリア州の"州の化石"に採用されている[ 3] 。他の地域からは知られていない。全長は約3-5 cmで、捕食者だった可能性がある。前方の体節は"頭部"を形成し、その後の体節は上面は一列、下面は二列の板で覆われている。
現在のところ類縁関係は不明である。環形動物 、rangeomorph 類、カルニオディスクス の変種、Proarticulata 、三葉虫 に似た節足動物 など様々な仮説が提案されている。脚を欠くこと、左右対称でなく映進対称 (英語版 ) であることからは節足動物とは考えにくい[ 4] 。
形態
復元
鋳型化石
全長3-5 cmまで成長し、全体的に楕円形である。体節を有するが、癒合した体節はなく、各節は後方に湾曲していることがある[ 5] 。上面は一列の、下面は二列の重なり合ったクチクラの板で覆われている[ 5] 。
最初の2体節は「頭部」を形成する。第一節は馬蹄形で、上面の1対の窪みは眼である可能性がある[ 5] 。第二節には触角があった可能性がある。後続の節には輪節 を持つ突起がある[ 5] 。
頭部の中心に円形の口があるように見える化石もあるが、小さな生物体が大粒の砂岩中に保存されているため正確な解釈は難しい[ 5] 。脚は保存されていない。
体の対称性は左右相称動物 のものと異なり[ 5] 、片側が半体節ずつずれる映進対称 である[ 4] 。体節の向きは、斜め後ろを向き全体に楔形のような形状となっているものから真横を向いているものまでかなりの幅がある。
発見
属名はエディアカラの丘 (英語版 ) で化石を発見し、それらを多細胞生物として扱うことを提唱したレッグ・スプリッグ への献名である[ 1] 。Spriggina 属に属するものとして広く受け入れられている種 は Spriggina floundersi のみである。種小名 floundersi は南オーストラリア州のアマチュア化石収集家であるBen Floundersへの献名である[ 6] 。かつてSpriggina 属に属していた Spriggina ovata はMarywadea 属に移されている[ 7] 。
エディアカラ紀の地層からのみ産出する。インドのヴィンディヤ盆地 の16億5000万年前[ 8] の地層から産出する化石がスプリッギナに分類されることもあるが[ 9] 、これらはおそらく微生物活動によるアーティファクトである[ 8] 。
体は石灰化していなかったが丈夫で、化石層の下面には常に鋳型が残っている。
分類
画像加工した化石写真
多くのエディアカラ生物群 の生物同様、他の動物との類縁関係は不明確である。オヨギゴカイ やウミケムシ などの現生多毛類とは一部類似点があるが[ 10] 、剛毛 を欠くことなどを考慮すると環形動物とは考えにくい[ 11] 。エディアカラ生物群 に見られる葉状形状をした生物であるランゲオモルフ (英語版 ) 類[ 12] とも比較される[ 13] 。体が映進対称であるため考えにくいが、外見的な類似から三葉虫 に近い節足動物 と考える研究者もいる[ 13] 。三葉虫との類似は収斂進化 の一例とも考えられる[ 14] 。捕食者 だった可能性もあり、そうだとすればカンブリア爆発 の引き金としての役割を果たした可能性もある[ 15] 。
脚注
^ a b Glaessner, Martin F. (1958). “New Fossils from the Base of the Cambrian in South Australia” . Transactions of the Royal Society of South Australia 81 : 185–188. BHL page 41001421 . オリジナル の29 September 2007時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20070929094012/http://www.samuseum.sa.gov.au/Journals/TRSSA/TRSSA_V081/TRSSA_V081_p185p188.pdf .
^ 地学基礎 第14回 第2編 私たちの地球の変遷と生物の変化 先カンブリア時代 - 日本放送協会 (NHK高校講座)2022年3月2日閲覧
^ “FOSSIL EMBLEM OF THE STATE OF SOUTH AUSTRALIA” . The South Australian Government Gazette (Adelaide: Department of the Premier and Cabinet) 2017 (8): 509. (16 February 2017). http://www.governmentgazette.sa.gov.au/sites/default/files/public/documents/gazette/2017/February/2017_008.pdf 6 July 2017 閲覧。 .
^ a b Ivantsov A.Yu. (2001). “Vendian and Other Precambrian "Arthropods"” . Paleontological Journal 35 : 335–343. https://www.researchgate.net/publication/291816373 .
^ a b c d e f McCall (2006). “The Vendian (Ediacaran) in the geological record: Enigmas in geology's prelude to the Cambrian explosion”. Earth-Science Reviews 77 (1–3): 1–229. Bibcode : 2006ESRv...77....1M . doi :10.1016/j.earscirev.2005.08.004 .
^ Vickers-Rich, P. Komarower, P. The Rise and Fall of the Ediacaran Biota . The Geological Society, 2007, p. 444.
^ Glaessner, Martin F. (1976). “A new genus of late Precambrian polychaete worms from South Australia.” (Free full text). Transactions of the Royal Society of South Australia 100 (3): 169–170. オリジナル の2007-09-29時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20070929094103/http://www.samuseum.sa.gov.au/Journals/TRSSA/TRSSA_v100/TRSSA_V100_p169p170.pdf .
^ a b Bengtson, Stefan; Belivanova, Veneta; Rasmussen, Birger; Whitehouse, Martin (2009). “The controversial "Cambrian" fossils of the Vindhyan are real but more than a billion years older” . Proceedings of the National Academy of Sciences 106 (19): 7729–7734. Bibcode : 2009PNAS..106.7729B . doi :10.1073/pnas.0812460106 . PMC 2683128 . PMID 19416859 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2683128/ .
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関連項目
外部リンク