キャベンディッシュ (英語 : Cavendish )は、バナナ の栽培品種 。種 としてはMusa acuminata に、品種群 (英語版 ) としてはAAA栽培型のキャベンディッシュ亜群に属する。
ドワーフ・キャベンディッシュ (英語版 ) やグランド・ナイン (英語版 ) など商業的に重要な栽培品種が含まれる。1950年代 以降、キャベンディッシュはもっとも流通量の多い栽培品種であり[ 1] 、パナマ病 によって荒廃したグロス・ミチェル から主役の座を奪った。
栽培の歴史
樹上で成熟中のキャベンディッシュ
栽培品種の名称は第6代デボンシャー公ウィリアム・キャベンディッシュ (英語版 ) に因んでいる。1834年頃、ウィリアム・キャベンディッシュはインド洋 のモーリシャス からバナナの荷物を受取り、庭師のジョセフ・パクストン がチャッツワース・ハウス の温室で栽培した[ 2] 。チャッツワース・ハウス産のバナナは、1850年代に太平洋 の様々な場所に持ち込まれている。この一方で、15世紀にはすでに北大西洋 のカナリア諸島 でバナナが生産されていたとする研究者もおり、初期のポルトガル人 探検家によって広められたとされる[ 3] 。
アフリカにおけるバナナの生産は、初期のオーストロネシア人 の船乗りによって東南アジア からマダガスカル に紹介されたのがきっかけである[ 4] 。1888年、カナリア諸島産のバナナがFyffes (英語版 ) 社によってイングランドに輸出された。この際に輸出されたバナナはドワーフ・キャベンディッシュであることが知られている[ 5] 。
1903年にはすでにキャベンディッシュの商業生産が開始されているが、当時の主要な品種だったグロス・ミチェル が1950年代にパナマ病 で荒廃すると、キャベンディッシュが主役の座を奪った。
利用
店頭で販売されている状態
1998年から2000年の統計において、キャベンディッシュは世界で生産されるバナナの47%を占めており、また国際取引に用いられるバナナの大半を占めていた[ 1] 。日本国内ではほぼこれ1種類のみが常食範囲内である。キャベンディッシュの果実は生食ができ、また焼きバナナ、フルーツサラダ 、コンポート 、補完用食品としても利用される。市場で販売される際の外皮 は部分的に緑色であり、熟すと黄色に変化する。熟すにつれて澱粉 が糖質 に変化して甘い果実 となる。
成熟が最終段階(第7段階)に到達すると、茶色または黒色のシュガースポットが生じる。熟しすぎると外皮は黒色に変化し、果肉は柔らかくなってしまう。収穫されるまでは自然に成熟するが、ひとたび収穫されると自然に黄色に変化することはなく、再び成熟を開始するためにエチレンガス でガス処理を行う必要がある。多くの小売業者は第3段階から第6段階でキャベンディッシュを販売しており、第4段階が理想的である。
キャベンディッシュのPLU コードは4011と4186であり、有機栽培種には94011が割り当てられている[ 6] 。キャベンディッシュは陰茎 に似た円柱形をしているため、コンドーム の正しい使用法を説明するための性教育 に使用される場合がある[ 7] 。
病害
キャベンディッシュはグロス・ミチェル が植えられていた土壌でも生育したため、つる割病に対する耐性が強いと信じられた。しかし2008年半ばには、スマトラ島 やマレーシア でつる割病に侵されたキャベンディッシュが報告されている[ 8] 。人為的に栽培されているキャベンディッシュは有性生殖 ではなく栄養生殖 によって繁殖するため、実質的に遺伝子型が同一のクローン となり[ 9] 、病害抵抗性が徐々に低下する。
苗木
外皮を剥いた状態
シュガースポットが出ている状態
右手に握りしめた状態
様々なバナナの品種。右端がキャベンディッシュ
脚注
^ a b Arias, Pedro; Dankers, Cora; Liu, Pascal; Pilkauskas, Paul (2003). The World Banana Economy 1985–2002 . Rome: Food and Agriculture Organization of the United Nations. ISBN 92-5-105057-0 . ISSN 1810-0783 . http://www.fao.org/docrep/007/y5102e/y5102e04.htm 30 July 2013 閲覧。
^ “peak district local history, customs, wildlife, transport - Peakland Heritage ”. web.archive.org (2016年3月14日). 2021年4月27日 閲覧。
^ Mohan Jain, S.; Priyadarshan, P. M. (2009). Breeding Plantation Tree Crops: Tropical Species . Springer Science+Business Media, LLC. ISBN 978-0-387-71199-7 . https://books.google.com/books?id=xReHR3_QYdkC&pg=PA19&lpg=PA19&dq=dwarf+cavendish+plantation#v=onepage&q=dwarf%20cavendish%20plantation&f=false
^ Rowe, Phillip; Rosales, Franklin E. (1996). “Bananas and Plantains” . In Janick, Jules; Moore, James N.. Tree and Tropical Fruits . Fruit Breeding. I . John Wiley & Sons. pp. 169–171. ISBN 978-0-471-31014-3 . https://books.google.com/books?id=7YBrT6Up_S0C&pg=PA169
^ Davies, Peter N. (1 January 1990). Fyffes and the Banana: Musa Sapientum : a Centenary History, 1888-1988 . Athlone Press. pp. 23–51. ISBN 978-0-485-11382-2 . https://books.google.co.jp/books?id=ysyzAAAAIAAJ
^ “PLU Codes(Alphabetical Order) ”. www.innvista.com. 2010年6月22日 閲覧。
^ Wight, Daniel, and Charles Abraham. "From psycho-social theory to sustainable classroom practice: developing a research-based teacher-delivered sex education programme." Health education research 15.1(2000): 25-38.
^ Ploetz, R. C. (2005). “Panama disease, an old nemesis rears its ugly head: Part 1, the beginnings of the banana export trades”. Plant Health Progress . doi :10.1094/PHP-2005-1221-01-RV .
^ “あと10年、世界からバナナが消える? 1億トン廃棄、疫病との闘い | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン) ”. forbesjapan.com . 2024年8月24日 閲覧。
外部リンク