カボザンチニブ
カボザンチニブ(Cabozantinib, 開発コード:XL184)は、腎細胞癌や肝細胞癌の治療に用いられるマルチキナーゼ阻害薬である[9]。海外では、甲状腺髄様癌の治療にも用いられている[10][11]。チロシンキナーゼであるc-MetやVEGFR2、AXL、RETなどを阻害する。米国Exelixis社が発見し、日本では武田薬品工業が開発・販売している[12]。 効能・効果日本で承認されている効能・効果は以下の2つである[13]。
米国[6]およびEU[4]では、甲状腺髄様癌の治療薬としても認められている。 禁忌本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者に使用してはならない。 欧州向けの添付文書では妊婦・授乳婦へも使用すべきでないと言及されている[4][3]。カルボザンチニブがヒト乳汁中に分泌されるか否かは明らかにされていないが、ラットの実験では、授乳期に母動物に使用した場合に児の血漿中からカルボザンチニブが検出されている[13]。日本では妊婦に対して「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ」使用するよう記載されている他、授乳婦に対しては「授乳しないことが望ましい」とされている[13]。 QT延長を含む不整脈の既往のある患者にも使用すべきではない[3]。 副作用日本の添付文書に記載されている重大な副作用は、以下の通りである[13]。 消化管穿孔(1.0%)、瘻孔(0.8%)、出血(7.9%)、血栓塞栓症(3.6%)、高血圧(クリーゼ含む)(33.0%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)、顎骨壊死(0.1%)、膵炎(0.6%)、腎障害(12.3%)、肝不全(0.1%)、肝機能障害(31.9%)、骨髄抑制(貧血(8.9%)、好中球減少(8.3%)、血小板減少(14.3%)、リンパ球減少(3.0%)など)、虚血性心疾患(0.1%)、不整脈(1.4%)、心不全(0.1%)、横紋筋融解症(0.1%)、間質性肺疾患(0.1%)、手足症候群(46.5%)、創傷治癒遅延(0.6%)、重度の下痢(9.7%)。 相互作用カルボザンチニブはCYP3A4とMRP2の基質である。これらの酵素を阻害するとカルボザンチニブの半減期が延長され、副作用が起こり易くなり得る。一方、他の薬剤でこれらの酵素の活性が上昇すると、カルボザンチニブの効果が減少し得る[3]。 グレープフルーツ(ジュース含む)は薬物の血中濃度を上昇させるため、摂取すべきでない[3]。 カルボザンチニブはP糖タンパク質を阻害するので、このトランスポーターの影響を受ける他の薬剤の血中濃度が上昇する[3]。 作用機序カルボザンチニブは下記の受容体型チロシンキナーゼを阻害する[3]。 開発の経緯カルボザンチニブは2010年11月に甲状腺癌について[14]、2017年2月に肝細胞癌について[15]、それぞれ米国FDAから希少疾病用医薬品として指定された。 2012年前半にFDAに新薬承認申請が提出され[16]、同年11月にカルボザンチニブのカプセル剤が甲状腺髄様癌治療薬として承認された[10][11]。同剤は2014年にEUでも同一用途で承認された[1]。 2015年、カルボザンチニブの腎細胞癌に対する臨床試験の結果がNEJMに掲載された[17]。 2016年4月、FDAは腎癌のセカンドライン治療薬としてカルボザンチニブ錠の使用を承認した[18][19]。同年9月、EUでも同様の使用が承認された[2]。 2017年1月31日、武田薬品工業とExelixis社との間で日本での独占開発・販売契約が締結された[12]。 2017年12月、進行腎細胞癌に対するカルボザンチニブ錠の使用がFDAに承認された[20]。この承認は無作為化非盲検多施設共同臨床試験CABOSUN(NCT01835158;患者数157名、未治療の低~中リスク患者)の結果に基づくものであった[20]。 2019年1月、ソラフェニブ治療歴のある肝細胞癌に対するカルボザンチニブ錠の使用がFDAに承認された[21]。この承認は無作為化(2:1)偽薬対照二重盲検多施設共同臨床試験CELESTIAL(NCT01908426;患者数707名、ソラフェニブ使用歴有・Child–Pugh分類Aの肝障害有)の結果に基づくものであった。 2020年3月25日、日本で「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」について厚生労働省より製造販売承認を取得した[22]。 2020年11月27日、日本で「がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌」について厚生労働省より製造販売承認を取得した[23]。 参考資料
外部リンク
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