カネラ目 (カネラもく、学名 : Canellales )は、被子植物 のモクレン類 (モクレン目群)に含まれる目 の1つである。精油 をもつ常緑性 の木本 であり、葉 は互生 し単葉、花 は放射相称(図1)。おもに熱帯 域から南半球 温帯域に分布しており、日本には自生種はいない。カネラ科 (約5属20種)とシキミモドキ科 (約5属100種)の2科を含む。
特徴
常緑性 の高木 から低木 [ 3] [ 4] [ 5] [ 6] (下図2a–c)。シキミモドキ科 は道管 を欠く[ 5] [ 6] 。師管 の色素体 はデンプン とタンパク質 顆粒または繊維を含む[ 7] 。節は3葉隙性[ 4] [ 5] [ 8] 。精油 を含み、ときにアルカロイド をもつ[ 4] [ 5] 。ドリマン 型セスキテルペン を有する[ 7] 。
葉 は互生 し、螺生または2列互生する[ 4] [ 5] [ 6] [ 8] (下図3a, b)。葉は単葉 、ふつう革質で無毛、油点をもち、全縁、葉脈 は羽状[ 4] [ 5] [ 6] [ 8] 。葉柄 があり、葉柄中の維管束 は弧状[ 7] 、托葉 を欠く[ 4] [ 5] [ 6] 。気孔 は平行型、ときに不規則型[ 4] [ 5] 。
花 はふつう両性、放射相称(上図1a, b, 下図4a, b)、集散花序 または総状花序 を形成または単生し、花序は頂生または腋生する[ 4] [ 5] [ 6] [ 8] 。花被片 は萼片 と花弁 に分化している[ 7] [ 4] [ 5] [ 6] [ 8] (下図4a)。花弁は2枚から多数、ふつう離生[ 4] [ 5] [ 6] [ 8] (上図1a, b, 下図4a, b)。雄しべ は3個から多数、シキミモドキ科 の多くでは離生し螺生するが(下図4a)、カネラ科 では合着して筒状の単体雄しべを形成している[ 4] [ 5] [ 6] [ 8] (下図4b)。花粉 は2細胞性、単口粒、シキミモドキ科では4集粒として放出される[ 4] [ 5] [ 6] [ 8] [ 7] 。1–20個の心皮 をもち、シキミモドキ科では離生心皮(複数の雌しべ ; 下図4a)で縁の合着が不完全(不完全心皮)[ 3] [ 9] 、カネラ科では合生心皮で1室の雌しべを1個もつ[ 4] [ 7] [ 10] [ 11] 。子房上位 、縁辺胎座 (シキミモドキ科)または側膜胎座 (カネラ科)、1心皮あたり胚珠 は1個から多数、厚層珠心、2珠皮性[ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 10] [ 8] 。胚嚢 はタデ型[ 4] [ 5] 。
果実 はふつう液果 であるが(下図5a, b)、カネラ科 のタクタヤニア属(Takhtajania )は蒴果 [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 10] [ 3] [ 8] 。胚 はよく分化しているが小さい[ 4] [ 5] [ 8] 。
分布
主に熱帯 から南半球 の温帯 域に生育するが、北半球 に分布する種もいる。北米 フロリダ州 から西インド諸島 、中南米 、アフリカ 東部から南部、マダガスカル 、東南アジア 、オーストラリア 東部、ニュージーランド に散在的に分布する[ 4] [ 5] [ 7] 。
人間との関わり
カネラ目の植物は精油 を含み、またセスキテルペン など生理活性 をもつ化合物を含むため、薬用 や香辛料 に利用されることがある。カネラ(カネラ科 )の樹皮 は白桂(white cinnamon)とよばれ、香料や香辛料に用いられることがある[ 11] [ 10] (下図6a)。またウァルブルギア属、キンナモデンドロン属(カネラ科)、シキミモドキ属、ドリミス属(シキミモドキ科 )などの樹皮、葉 または果実 が薬用や香辛料に利用されることもある[ 3] [ 10] [ 12] [ 13] [ 14] (下図6b)。他にも材 として利用される例や、観賞用に植栽される例もある[ 10] 。
系統と分類
被子植物 の古典的な分類体系である新エングラー体系 やクロンキスト体系 では、花の特徴などに基づいてカネラ科とシキミモドキ科はモクレン目 に分類されていた[ 15] [ 16] [ 17] [ 18] 。シキミモドキ科は道管 を欠くことや雌しべ の心皮が二つ折りで完全に合着していないなどの特徴から、最も原始的な特徴をもつ被子植物 の1つとされていた[ 10] [ 19] 。一方でカネラ科は心皮 が合生して側膜胎座 をもつ1室の雌しべ を形成する点ではモクレン目としては例外的であり、スミレ目 に分類されたこともある[ 11] 。しかし20世紀末以降の分子系統学 的研究により、カネラ科とシキミモドキ科が近縁であること、この群が他のモクレン目植物とは系統的にやや遠いことが明らかとなり、2022年現在ではこの2科はカネラ目としてまとめられている[ 7] [ 20] 。
カネラ目は被子植物の中で比較的初期に分岐したグループであり、コショウ目 、クスノキ目 、モクレン目 に近縁であると考えられている[ 7] (系統樹参照)。カネラ目とこれら3目からなる系統群は、モクレン類 (モクレン目群 magnoliids)とよばれる。モクレン類の中では、カネラ目はコショウ目の姉妹群であると考えられている[ 7] 。
2022年現在、カネラ目はカネラ科 とシキミモドキ科 からなり、カネラ科はおよそ5属20種、シキミモドキ科はおよそ5属100種を含む[ 21] [ 6] [ 7] [ 20] (下表1)。
脚注
注釈
出典
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外部リンク
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GBIF Secretariat (2021年). “Canellales ”. GBIF Backbone Taxonomy . 2023年1月25日 閲覧。 (英語)
“Canellales Cronquist ”. WFO Plant List . 2023年1月25日 閲覧。 (英語)
Stevens, P. F.. “CANELLALES ”. Angiosperm Phylogeny Website . 2023年1月25日 閲覧。 (英語)