特に、権利保有者は、自身の回復著作権のいわゆる「執行意思届出」(Notice of Intent to Enforce、NIE)を提出するか、自身の著作物をすでに利用する者(すなわち、既存の依拠当事者)に対して当該事実を通知しなければならなかった。NIEは、アメリカ合衆国著作権局に提出され、一般に公開された[20]。著作権が回復した後に権利保有者の許諾なく著作物を利用した利用者に対する回復著作権の執行については、NIEは不要である[21]。
ゴラン対ゴンザレス事件(Golan v. Gonzales)では、著作権延長法とウルグアイ・ラウンド協定法の著作権回復条項の双方が、アメリカ合衆国憲法の著作権・特許権条項(第1編第8条第8項)違反として争われた。同条項は、連邦議会に対して、「著作者および発明者にそれぞれの著述および発見に対する排他的な権利を有限の時間について確保ことにより、科学および有用な技芸の進歩を促進する」(強調を追加)権限を付与するものである。原告らは、ウルグアイ・ラウンド協定法は、著作物をパブリック・ドメインから取り除いて再び著作権を付与することから、著作権期間の「有限性」に反すると主張し、さらに、このことは科学および有用な技芸の進歩を促進しない、とも主張した。そのうえ、原告らはウルグアイ・ラウンド協定法は修正第1条と修正第5条に反するとも主張した。これらの異議はコロラド地区連邦裁判所により退けられたが[22]、これに対して合衆国第10巡回区控訴裁判所への控訴がなされた結果、修正第1条との関係の合憲性についてはその見直しを求めて同地裁に差し戻された[23][24]。2009年4月3日に差戻事件であるゴラン対ホルダー事件(Golan v. Holder)において、コロラド地区連邦裁判所のルイス・バブコック裁判官は、ウルグアイ・ラウンド協定法は修正第1条に違反するとの見解を示した[25]。同裁判所は、ウルグアイ・ラウンド協定法の第514条が政府利益の達成に必要な範囲よりも実質的に広い、との判断を示したのである。すなわち、パブリックドメインにある一定の著作物について著作権を回復し、当該回復から1年後には利用料の支払を求め派生著作物を制限することにより、連邦議会は、憲法上の権限を踏み越え、当該著作物の依拠当事者の修正第1条上の権利の完全な保護を怠ったものとしたのである[26][27]。
^合衆国法典. “[USC02 18 USC 2319A: Unauthorized fixation of and trafficking in sound recordings and music videos of live musical performances]”. uscode.house.gov. 2007年1月30日閲覧。
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改訂の書籍版は右記の通り。Patry, William F; Martin, Rebecca F (2000). "Copyright Law and Practice : 2000 Cumulatuve Supplement". Washington, DC : NBA Books. ISBN 1-57018-208-6, OCLC 1052754857.
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Regnier, O. (1993). 11. “Who Framed Article 18? The Protection of pre-1989 Works in the U.S. under the Berne Convention”. European Intellectual Property Review (15): 400-405. ISSN0142-0461.
^省略された法令名:Berne Convention for the Protection of Literary and Artistic Works of September 9, 1886, completed at PARIS on May 4, 1896, revised at BERLIN on November 13, 1908, completed at BERNE on March 20, 1914, revised at ROME on June 2, 1928, at BRUSSELS on June 26, 1948, at STOCKHOLM on July 14, 1967, and at PARIS on July 24, 1971, and amended on September 28, 1979.