アラベスク (映画)
『アラベスク』(Arabesque)は、1966年にアメリカ合衆国で制作されたコメディサスペンス映画。監督は『シャレード』のスタンリー・ドーネン。出演はグレゴリー・ペック、ソフィア・ローレンなど。音楽はヘンリー・マンシーニ、ローレンの衣装デザインはクリスチャン・ディオールである。 古代文字が専門の大学教授が、中東の国家元首暗殺計画に巻き込まれる。 ストーリーデヴィッド・ポロックは古代アラビアの象形文字の専門家で、オックスフォード大学教授である。ある日、中東のある国の首相イエナによって突然大学構内から連れ出されてしまう。イエナはポロックに、海運王で国の実力者であるベシュラビが翻訳を依頼してきたら、彼をスパイするようにと説得する。イエナによれば、ベシュラビは自身のビジネスに不利になるとし、イエナが英米と結ぼうとしている条約調印を阻止するため不穏な動きを計画しているという。 その通りポロックはベシュラヴィの依頼を受け、謎の象形文字の解読にあたる。そこへベシュラビの愛人である着飾った美女ヤスミンが現れて、仕事が終わったらポロックは殺されるであろうと警告する。ポロックは彼女の助けを借りベシュラビのもとから脱出する。ベシュラビの部下に追われる二人だが、間一髪のところウェブスターと名乗る男に助けられる。しかし助かったと思いきや、彼の狙いもまた象形文字にあった。 連れ去られたポロックはバンの車内で反政府ゲリラのリーダーを名乗るユセフと親しげなヤスミンの様子を見て、彼女に不信感を募らせる。だがユセフは、とある建築現場で彼女を殺そうとしたのでポロックは彼女を助ける。ヤスミンは政府の諜報工作員だったのだ。 そしてついにポロックは秘密文書を解読した。それは、その日ロンドンに到着するイエナ首相の暗殺計画書だった。雨の中、赤エナメルのレインコートにレインブーツ姿のヤスミンと共に、空港での記者会見場に急ぐ。ポロックとヤスミンは首相を助け、暗殺者一味と対決し、ついに彼らを倒した。 キャスト
※日本語吹替版は長年TBS版のみだと思われたが、BD発売の際に吹替音源募集を担当したフィールドワークスが調べたところ、1973年初回放送のフジテレビ版が存在することが判明した[5]。アネックから2022年12月21日発売のHDリマスター版BD(ANRM-22325B)には、そのフジテレビ版が収録。 製作プロデューサー兼監督のスタンリー・ドーネンは、前作『シャレード』に主演したケーリー・グラントをポロック役に望んでおり、ポロックの台詞はグラントを想定して書かれていた。しかし、ドーネンは後にこう語っている[6]。
ドーネンは後に、脚本だけで40万ドルを費やしたと述べ、撮影監督のクリストファー・チャリスは、この映画が何度も書き直されたと回想している[2]。チャリスは「脚本は書き直されるたびに悪くなった」と語った[6]。ペックとローレンがすでにこの映画の出演契約を結んでいたので、チャリスは、ドーネンから「唯一の望みは、観客が何が起こっているのか理解する暇がないほど、視覚的にエキサイティングな作品にすることだ」と言われたと回想している[7]。 台詞の改良のためにかなり遅れて参加したピーター・ストーンは、ドネンが「これまで撮ったどの映画よりもうまく撮った。すべてがロールスロイスのヘッドランプに映るように撮られていた。」と語った[8]。ドーネンは、この映画を撮影する際の自分のテクニックを以下のように語っている[9]。
ペックはドーネンについて以下のように語った[6]。
追跡シーンでは、数年前に乗馬事故で負傷していたペックは、先を行くローレンに追いつくほど速く走ることができなかった。ペックは彼女にもっと遅く走るよう懇願し、自分が彼女を救うはずだと念を押したが、彼女はドーネンに彼を速く走らせるように言った。ペックは痛がっていたので、ドーネンはローレンにゆっくり走るように説得して、このシーンを撮影した[10]。 作品の評価映画批評家によるレビュー本作は批評家や観客から賛否両論の評価を受け、Rotten Tomatosで74%の支持率を獲得している。 ボックスオフィス・マガジンは「卓越したスパイ・アドベンチャー」と呼び、「アルフレッド・ヒッチコックの最高の系統にあり、今年のベストに入る」と書いた[11]。バラエティ誌は「『アラベスク』には売れる要素があるが...難は影のある筋書きと混乱したキャラクター設定、特にペックにお茶目な役をやらせたことである」とした[12]。 興行的には成功した[8]。 受賞歴
脚注
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