アフリカの野球 (アフリカのやきゅう)では、アフリカ における野球 の動向について説明する。
概要
アフリカでは、広く普及しているサッカー に比較して、野球はマイナースポーツである[ 1] 。
以下の国では野球の国内大会が行われている(ランキングは2023年12月時点[ 2] )。
ウガンダ には2014年に選手の自主運営によるアマチュア野球リーグが発足したが[ 8] 、資金不足などにより一時活動を停止し、その後日本からの援助も受けて運営されている[ 9] 。ウガンダのWBSC世界ランキングは2023年末時点で48位である[ 2] 。ほかにケニア が61位となっている[ 2] 。
歴史
アフリカでの野球開催の記録は、アメリカの元選手アルバート・スポルディング が実施した現役選手による世界ツアーの途上1889年2月にエジプト のギザ にあるピラミッド 前で実施した試合が古い例として残る[ 1] 。
南アフリカでは19世紀末期に、アメリカから金鉱に渡ってきた鉱山労働者が野球を始め、1905年までに最初の競技団体がトランスヴァールに設立されている[ 10] [ 11] 。また1934年には、座礁した日本の商船(大阪商船 の「ぱりい丸[ 12] 」)の船員がポート・エリザベス に滞在する間に現地の住民と野球をしたことで、その年のうちに現地に野球協会が設立された事例もあった[ 13] 。
普及は第二次世界大戦 後に始まり、特に南アフリカが先行した[ 1] 。ナイジェリアでは1960年にアメリカの平和部隊 が野球を伝えたが、1966年の内戦に伴って撤退すると途絶え、1989年にナイジェリア野球・ソフトボール協会を設立してから再興した[ 4] [ 5] 。
1990年にアフリカ野球・ソフトボール協会 (African Baseball & Softball Association、ABSA)が設立された(本部はナイジェリア)。
普及活動
世界野球ソフトボール連盟 (WBSC)はアフリカの国々に野球を普及させるため、2017年にヨハネスブルグ で開いた「アフリカ野球サミット」以降、"African Development Project" (ADP)をABSAとともに手がけており、これまでコートジボワール ・ケニア ・レソト ・南アフリカ・ザンビア ・タンザニアを対象に活動している[ 14] 。
ガーナ では野球を普及させて学校チームによる大会創設を目指す「ガーナ甲子園プロジェクト」が日本人の援助により実施されている[ 15] 。ガーナではそれ以前の2001年にトヨタ自動車 の現地法人が支援する形で14歳以下の国内大会の創設構想が報じられたことがあったが[ 16] 、具体化しなかった。野球ガーナ代表 はWBSC世界ランキング73位である[ 2] 。
タンザニアでも「甲子園」を銘打った少年大会が開催されているが、これをより多くの国に広げる「アフリカ55甲子園プロジェクト」を、日本の財団法人「アフリカ野球・ソフト振興機構」 (J-ABS)が2022年 から実施する計画を立てており[ 17] 、同年5月よりガーナでプロジェクトがスタートした[ 18] 。
このほかにもエジプト などで野球の普及活動が行われている[ 19] 。こうした活動は、日本とアメリカのNGO(日本の場合は青年海外協力隊 のOBなど)が多くを担っている[ 1] 。
2016年にはブルキナファソ を中心とした「野球西アフリカ選抜」チームが、四国アイランドリーグplus の高知ファイティングドッグス や北海道日本ハムファイターズ OBチームと親善試合をおこなった[ 20] [ 21] 。
国際大会
過去に判明しているだけで1992年・2001年・2019年の3回開催されている[ 22] 。結果の判明している3回とも優勝は南アフリカである[ 22] 。
出身選手
1966年に南アフリカの投手・デビット・ロエリー(David Lowery)が、ミネソタ・ツインズ のスプリングキャンプに参加を許された[ 11] 。しかし、これはオーナーであるカルヴィン・グリフィス (英語版 ) [ 23] の宣伝であり、結局メジャーリーグベースボール (MLB)のロースターには入れなかった[ 11] 。ロエリーはツインズ傘下だった1Aのマイナーであるオルランド・ツインズ(のちのオルランド・レイズ (en ))で1シーズンプレーした[ 24] 。
1990年代以降、MLBは選手の供給源として南アフリカに着目し、南アフリカの白人系選手(二重国籍者を含む)からMLB機構に入る選手が出現した[ 1] 。
野球南アフリカ代表だったギフト・ンゴエペ は、2017年にピッツバーグ・パイレーツ のロースター入りし、アフリカ出身者として初のMLB選手となった[ 25] 。また同じく南アフリカ出身のテイラー・スコット は、2019年にシアトル・マリナーズ のロースター入りし、ンゴエペに次ぐ2人目のアフリカ出身MLB選手となったほか、2019年のオフには広島東洋カープ に入団し、日本プロ野球 初のアフリカ出身者選手となった[ 1] 。
また、下記の選手は日本 の独立リーグ に所属経験がある。
上記のカトー・エドリン、および独立リーグ非所属で南スーダン 出身のジョセフ・デン・トンは、2024年 2月に、福岡ソフトバンクホークス のファームキャンプに参加している[ 37] 。
脚注
^ a b c d e f g h i 阿佐智 (2019年12月6日). “NPB初、「アフリカ人選手」誕生。「野球不毛の地」、アフリカと野球の浅からぬ縁” . Yahoo!ニュース . https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/102f3e0e87b52f0ccb0cbd1a11dc62f906c2be0e 2020年5月1日 閲覧。
^ a b c d WORLD RANKINGS - WBSC(2024年8月31日閲覧)
^ U-18対戦国の野球/アフリカ大陸の野球最強国・南アフリカ共和国 - 野球日本代表ウェブサイト(2015年8月19日)2020年5月3日閲覧
^ a b History of Baseball in Nigeria - BASEBALL IN NIGERIA(英語)2020年5月3日閲覧
^ a b Introducing Nigerian Baseball and Softball Association - ナイジェリア野球・ソフトボール協会facebook(英語)2020年5月3日閲覧
^ "世界の野球"アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道「はじまりと今」 - 野球日本代表ウェブサイト(2017年3月28日)2020年5月4日閲覧
^ "世界の野球"アフリカ球児の熱い青春!タンザニア野球“KOSHIEN”への道「俺たちの“ KOSHIEN " - 野球日本代表ウェブサイト(2017年5月11日)2020年5月4日閲覧
^ "世界の野球" ”アフリカからの挑戦・赤土の青春” ウガンダベースボール「強化活動について~いつかは大敗を~」 - 野球日本代表ウェブサイト(2016年9月29日)2020年5月1日閲覧
^ ”ウガンダの野球リーグを復活させる大学生たち”へインタビュー。 - TASUKAKE(2018年)2020年5月1日閲覧
^ “SOUTH AFRICAN BASEBALL UNION ” (英語). 世界野球ソフトボール連盟 . 2023年7月2日 閲覧。
^ a b c Josh Chetynd"A History of South African Baseball (PDF ) "『A Journal of Baseball History and Culture』Vol.16 No.2、2008年春号、pp.73 - 79(英語)
^ 『大阪商船株式会社80年史』 - 大阪商船、1966年(リンク先は渋沢社史データベース。1934年1月16日の箇所に「ぱりい丸南ア・ポートエリザベス港沖で座州沈没」とある)
^ SOUTH AFRICAN BASEBALL UNION(世界野球ソフトボール連盟) - ウェイバックマシン (2022年1月19日アーカイブ分)
^ Africa: Baseball, softball set to expand in Tanzania - WBSC(2020年3月3日、英語)2020年5月1日閲覧
^ 友成晋也 (2019年12月14日). “ガーナにも「甲子園球場」ができた!野球人、アフリカをゆく(18)アフリカ野球がもたらした予期せぬ変化とは ”. web論座 . 2020年5月4日 閲覧。
^ “Toyota to sponsor baseball league” (英語). Ghanaweb . (2001年6月4日). https://www.ghanaweb.com/GhanaHomePage/SportsArchive/Toyota-to-sponsor-baseball-league-15717 2020年5月28日 閲覧。
^ “松井秀喜氏が伝道師 アフリカに「甲子園大会」をつくり青少年育成を目指す” . 日刊スポーツ . (2021年11月30日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/202111300000712.html 2021年11月30日 閲覧。
^ “松井秀喜さんが応援する「アフリカ55甲子園プロジェクト」ガーナが甲子園大会の開催を目指し、始動! 日本で集めた野球道具の贈呈式、指導者セミナーを首都アクラで開催しました ”. 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 (2022年5月18日). 2022年5月22日 閲覧。
^ Because Baseball nominated to Peace and Sport Awards - WBSC(2018年6月10日、英語)2020年5月1日閲覧
^ 高知ファイティングドッグス 対 西アフリカ選抜 四国アイランドリーグplus 公式サイト (2016年7月24日) 2020年5月1日閲覧
^ a b 親善試合「西アフリカ選抜対北海道日本ハムファイターズOBレジェンズ」に ジニオ選手参加のお知らせ - ベースボール・チャレンジ・リーグ (2016年6月17日)
^ a b Africa Cup Baseball Championship - BASEBALL References(英語、2020年5月1日閲覧)
^ Chetwyndの原文ではクラーク・グリフィス (カルヴィンの養父かつ叔父で1950年没)と誤記している。
^ David Lowery - BASEBALL REFERENCE
^ Bucs' Ngoepe MLB's 1st African player MLB.com (英語) (2017年4月27日) 2020年5月1日閲覧
^ “日本で夢を掴んだブルキナ初のプロ野球選手 試合後は農作業” . Newsポスト
セブン . (2016年2月7日). https://www.news-postseven.com/archives/20160207_382547.html?DETAIL 2020年5月1日 閲覧。
^ a b 兵庫ブルーサンダーズにウガンダから2選手が入団! - 国際協力機構 関西支部(2014年5月26日)2020年5月1日閲覧
^ 新入団選手のお知らせ - 兵庫ブルーサンダーズ
^ 旭川ビースターズ [@BeStars_A] (2024年1月29日). "2024年1月29日のポスト" . X(旧Twitter) より2024年1月29日閲覧 。
^ カトー・エリック - 兵庫ブルーサンダーズ(2020年5月1日閲覧)
^ 富良野ブルーリッジ [@furanoridge] (2022年7月4日). "【球団からのお知らせ】" . X(旧Twitter) より2022年8月7日閲覧 。
^ 入団選手のご紹介!その22 - 旭川ビースターズ (2023年6月10日)2023年6月12日閲覧。
^ キアン選手ついに合流!国際色豊かなチームとなったビースターズはますます盛り上がる! - 旭川ビースターズ(2023年7月1日)2023年7月2日閲覧。
^ “【特集】ウガンダ人左腕・カトーエドリン その手で切り拓く故郷の未来(「あすリート」)” . 読売テレビ . (2023年10月19日). https://ytv-athlete.jp/baseball/27826 2024年5月11日 閲覧。
^ カベンゲ選手合流のお知らせ - 旭川ビースターズ(2024年6月28日)2024年8月12日閲覧。
^ 旭川ビースターズ [@BeStars_A] (2024年8月12日). "【新入団のお知らせ】" . X(旧Twitter) より2024年8月12日閲覧 。
^ 上杉あずさ (2024年2月21日). “鷹がアフリカ選手のトライアウト実施 NPB初の試み…フロントが明かす狙い” . Full-Count . https://full-count.jp/2024/02/21/post1516314/ 2024年2月21日 閲覧。
関連項目