学生割引学生割引(がくせいわりびき)とは、学生・生徒を対象に提供される割引制度のことである。一般に学割(がくわり)と略されることが多い。 概要学生割引は主として交通機関の運賃に適用される。これは、通学や帰省、あるいは就職や進学のための受験等で、経済的な能力のない学生の負担を減らすためである。したがって、交通機関を利用する長期の旅行のために学校が発行する割引証は、長期休暇での利用を前提にしているためその枚数が限られている。 学生割引は、交通機関以外にも様々な業種・サービス等で実施されている。その背景には、今後、社会人になっていく学生に対し様々なサービスを優遇することにより、長期的な顧客として確保しようという考えもある。学生・生徒ら将来を担う人たちのために、教育と学習機会を提供するという意味で割引、もしくは無料になっている教育施設も少なくない。 またある程度の割引については、単純にその方が経済的に合理的である(つまり儲かる)こともあり、それを目的として学割を設定することも考えられる。これは一般に収入の低い者の方が需要の価格弾力性が高いことによる。つまり一般に収入が低いものの方が、購入には価格が重要な要素となっており、価格を下げることでより多くの顧客を獲得できるため、最も利益を上げられる価格が異なる。 例としてある入場券を考えると以下のようになる。
このように集団によって需要の価格弾力性が異なる場合には、それぞれの集団に最適となる価格を設定することで、利益を最大化できる。ただし、所得それ自体を見極めるのは難しく、また顧客を区別することについて、高い価格を課されるものに不公平感などを感じさせることとなっては問題である。そこで、学生が一般的に収入が低いことに着目して、判別が容易でかつ(教育のためなどとして)社会的に認められる区別方法として、学生であるから割引することで利益を増大させていると考えられる。 対象は概ね一条校が対象であり、自動車学校などは対象外であるが、大学校、特別支援学校(盲学校、聾学校、養護学校)、国際学生証所持者、予備校生など広義の学生を対象とすることもある[1]。多くは大学生の年齢(概ね24歳)を上限とすることが多いが、事業者によっては夜間や通信制の学部を考慮して在籍していれば年齢不問としたり、職業訓練のための機関、警察・消防・軍の内部教育のための機関も対象に含めることがある[2]。 字の通り学生を対象としたサービスであるため、中学3年生を除く15歳以上25歳未満で割引適用の際には学生証など証明が必要な場合が多い。義務教育期間中の場合は年齢のみ確認で認められる場合もある。割引によっては乳幼児・未就学児も含まれることもある。 日本の学生割引鉄道学生割引乗車券
通学定期乗車券通学定期乗車券は、鉄道事業者から指定を受けた学校等の学生・生徒で、購入時に学校長より許可がある通学証明書(学生証と一体型のタイプもある)を提示することによって割引額で購入できる。ただし、通学を目的とするため、発売区間は自宅の最寄り駅から学校の最寄り駅までに限定される。割引率は区間によって異なるが高校生の場合、JRでは概ね通勤定期から5割引[注釈 1]、大手私鉄では7割引、中小私鉄や第3セクター鉄道では3割引である[注釈 2]。 通学回数乗車券通学回数乗車券は、通信制学校(放送大学を含む)への通学者が利用できる。11枚綴りを10枚分の運賃で購入する。価格は通信制学校の場合、普通回数券(一般用)から5割引き、放送大学は2割引きであり、有効期限が3か月から6か月に伸びる。購入には学校長が発行する「学校学生生徒旅客運賃割引証(通信教育学校用)」を駅の窓口等に提出して購入する。 その他
航空日本では2023年3月1日現在、九州、沖縄方面に路線網を持つ航空会社であるソラシドエアが「予約ができるヤング割」という名称で発売している。学生であれば年齢制限はなく、満12歳以上(に達した小学6年生を含む)から22歳未満までの人も対象である。学校教育法第1条の規程による幼稚園を除く学校の学生および生徒、学校教育法第82条の2の規定によって設立された専修学校及び同法第83条の規定によって設立された各種学校の学生および生徒、さらに国際学生証を保持する人も対象としているため、制度上は日本国外の学生でも学生割引を受けられることになる。 ほかの日本の交通機関では、津軽海峡フェリー[5] などごく一部を例外として、JR[6] を含めほとんどの事業者で国際学生証を受け付けておらず、学生割引は受けられない。 スターフライヤーも「スター学割」という学生割引運賃があったが(国際学生証を保持する人も対象であった)、2015年10月25日搭乗分から満12歳以上満25歳未満を対象とした「スターユース」運賃が導入されるとともに[7]、「スター学割」は廃止された[8]。 類似した割引としてスカイメイト(青少年割引運賃)があるが、これは満12歳以上(に達した小学6年生を含む)から26歳未満までが対象の年齢制限割引であり、厳密には学生割引ではない。そのため、対象年齢であれば社会人でも利用することができる。 割引率は早割等には及ばないものの当日購入する航空券の中ではかなり安く設定されており普通運賃と比較して6割程度の高い割引率であるのも特徴である(離島を含むローカル線では採算の関係上35%程度、北海道エアシステムの一部路線や羽田ー宮古/石垣路線の場合は75%〜80%などと路線によっても多少異なる)。また航空の場合、鉄道とは異なり障害者割引よりユース割引の方が安価に設定されていることが多い。 当日航空券を買った場合、小児普通運賃[注釈 3](割引率は大人普通運賃もしくは「フレックス運賃」の半額程度)より半額以下で購入できるスカイメイトの方が安い場合が多く、3−11歳の乗客が12−25歳の乗客より運賃が高額になるパターンも存在する。 大手航空会社である日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)[注釈 4]は自社のマイレージ会員もしくは学生向けのクレジットカード保有者限定など割引を受ける条件は航空会社により多少異なるが基本的には年齢を証明できるものを持参すれば当日空港のカウンターで購入できることが多い(例:AIR DO、スターフライヤー、ソラシドエアなど)。ただし空席があることが条件である。またオリエンタルエアブリッジや天草エアラインといった中・小規模な航空会社でも同様の割引を行っている場合がある。 予約については予約可能な航空会社と不可能な航空会社が存在するため各航空会社に確認することをお勧めする。 なお、スカイマークの「U21直前割」は2022年に廃止された。また、アイベックスエアラインズはユース割引を設定していない。 格安航空会社(LCC)ではそもそも運賃が安価に抑えられているため、ユース割、学割等は存在しない。 その他交通機関鉄道や航空以外の交通機関でも、路線によっては学生割引の制度がある。 鉄道以外の交通機関の学生割引措置は、あくまで営業施策の一環であり、鉄道のように必ずしも「学生・生徒旅客運賃割引証」を必要としない反面、鉄道運賃より安価で発売していることや、JRバスグループの「青春ドリーム号」のように廉価な運賃を設定している場合、学割の設定がない場合もある。
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博物館・美術館※社会教育施設
娯楽施設興業飲食ヨーロッパの学生割引フランスの学生割引フランスでは学生証を提示すれば美術館、観光スポット、イベント、公共交通機関などで割引を受けることができることが多い[10]。 ドイツの学生割引ドイツでは学生証を提示すれば博物館、美術館、公共交通機関などで割引を受けることができることが多い[11]。 クロアチアの学生割引クロアチアでは約120の博物館で学生割引が設定されている(2017年現在)[12]。 スロヴェニアの学生割引スロヴェニアでは約20の博物館で学生割引が設定されている(2017年現在)[12]。 スロヴェニアでは多くのレストランで学生割引(študentski boni)を利用することができる。海外からの留学生を含め、大学生及び大学院生のみ利用が可能であり、指定の場所で登録をする必要がある。2018年現在、登録所はスロヴェニア全体で18カ所あり、専用カード発行もしくはスロヴェニアで利用が可能な携帯電話で登録することができる。カード発行の場合は15€の登録料金が必要。一日ごとの利用回数の上限は2回で、再利用するには前回の使用から4時間経過している必要がある。主に会計時にBoniの認証をするが、顔写真付きの身分証明書を提示する必要がある。[13] カナダの学生割引カナダの博物館や美術館では学生割引が設定されていることが多い[14]。 ニュージーランドの学生割引ニュージーランドの長距離バスでは学生証を提示すれば20%オフ程度の割引を受けることができる[15]。 関連項目脚注注釈
出典
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