同期発電機同期発電機(どうきはつでんき)は、界磁の作る磁界が電機子巻線を横切る回転速度に同期した電力を発電する交流発電機である。 回転子が界磁の、回転界磁形が一般的に用いられる。 特徴誘導発電機と比べると次のような特徴がある。 電機子反作用電機子電流(負荷電流)が、界磁が作った磁束を乱す作用である。電機子電圧と電機子電流の位相差(力率角)によって様子が異なる。 交差磁化作用(横軸反作用)力率が1の時、回転方向前側の磁束を弱め、後側の磁束を強める作用である。理論的には、磁束を弱める作用と強める作用は同じ大きさだが、実機では、磁気飽和により磁束を強める働きの方が小さくなるため、全体として磁束はやや弱くなる。発電機では、磁束が遅れて、回転子(界磁極)が磁束を引っ張る形になる。 増磁作用(直軸反作用)力率が進み(容量性負荷)のとき、磁束を強める方向で作用する。磁化作用とも言う。特に、負荷の力率が小さい場合(無負荷送電線の試充電など)は、負荷電流により磁束が強まることで電圧も高まり、そのため更に負荷電流が増えるという現象が発生し、電圧が著しく高くなること(自己励磁作用)がある。 減磁作用(直軸反作用)力率が遅れ(誘導性負荷)のとき、磁束を弱める方向で作用する。 同期リアクタンス電機子電圧は電機子電流が流れると、電機子反作用によって変化する。その変化は電機子電流に比例するので、その比例係数を同期インピーダンスZ s と呼ぶ。電機子電流I を流した発電機では、無負荷誘導起電力E0 と電機子端子電圧V の間には、
の関係がなりたつ。無負荷誘導起電力E0 は界磁の磁束が作り出す電圧で、無負荷時 (I =0) の時に測定される。Z s I の項は、電機子電流I による電機子電圧V の変化を表す。 同期インピーダンスは、電機子巻線の抵抗ra(実数分)と同期リアクタンスX s(虚数分)に分解される。
大型の同期機では、巻線抵抗ra は同期リアクタンスX s よりも十分小さいので、巻線抵抗を無視して、同期リアクタンスと同期インピーダンスを同一視することも多い。 突極機では、直軸方向(界磁極の磁束の方向)に対する磁気抵抗と、横軸方向(界磁極と界磁極の間の方向)に対する磁気抵抗が異なるため、同期リアクタンスも異なってくる。この場合、直軸リアクタンスX d と横軸リアクタンスX q を用いた 二反作用理論 を用いる。 短絡比定格電圧からの短絡電流I s が、定格電機子電流I n の何倍を表す比を 短絡比 K s と言う。すなわち、
ここで、「定格電圧からの短絡電流I s 」とは、無負荷で定格電圧が出るよう界磁電流を調整し、電機子端子を三相短絡したとき流れる電機子電流である。 一般には、無負荷時に定格電圧が出る界磁電流 と、短絡試験時に電機子電流が定格値となる界磁電流 を用いて、短絡比を で求める。これは、短絡特性では界磁電流と電機子電流がほぼ比例することによる。定義に基づく試験では、短絡電流が定格を越えることがあるので避けている。短絡比の値の逆数は、単位法で表した同期リアクタンスと一致する。 単位法で表した同期リアクタンス は、同期リアクタンス に定格電流 を流したときの電圧降下 が、定格相電圧 の何倍になるかを表している。
一方、定格電圧からの短絡電流 は、定格電圧を同期リアクタンス で制限した電流値 である。短絡比の定義より、 短絡比の値は、水車発電機で0.8 - 1.2程度、タービン発電機で0.4 - 0.7程度である[1]。 短絡比が大きな機械は、電機子電流を流しても電圧変動が小さく、安定した使いやすい機械である。鉄心が太く、磁気装荷が大きい鉄機械となり、寸法・重量が大きく、高価になる。短絡比が小さな機械は、電機子電流を流したときの電圧変動が大きい。細い鉄心に電機子巻線をたくさん巻き、電気装荷が大きい銅機械となる。 同期発電機の分類大容量の発電所で三相交流を発生するのに用いられるのは三相同期発電機である。
仮想同期発電機同期発電機は
といった系統連系、供給電力の安定化に好ましい性質を持っている。これらの性質をインバーターにより出力する太陽光発電などに持たせるためコンピューター上で同期発電機をシミュレーションしインバーターの制御に反映する仮想同期発電機が考案され実用化されている。[2][4] これにより非常に多くの、大規模な分散型電源による安定した電力供給が可能になる。[5] →詳細については「仮想同期発電機」を参照
脚注
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