公設秘書公設秘書(こうせつひしょ)は、個人給与を国費で負担する国会議員の秘書。政策担当秘書、公設第一秘書、公設第二秘書の3人を置くことが国会法で認められている。身分は特別職国家公務員。 各公設秘書について政策担当秘書→詳細は「国会議員政策担当秘書」を参照
公設第一・第二秘書
身分関係公設秘書の任免は各国会議員の判断で行うが、給与は議員の所属する院から支払われる。また、公設秘書は、その所属する議員の指揮命令の下に勤務し、議員の所属する院の指揮命令には服さない。公設秘書の通行記章は、その所属する議員ではなく、議員の所属する院から発行される。また、公設秘書の健康保険については、事業主は議員の所属する院となっている。このように、法的に曖昧な地位に置かれているのが公設秘書の現状である。 職務公設秘書の職務は、国会議員の職務の補佐である(公設秘書の給与が国庫から支出される以上、公設秘書も専ら国家のための仕事に従事すべきは当然であるとされる)。ここでいう議員の職務とは、国会議員がその地位にあることに由来して発生する職務であり、典型的には議院における諸々の活動である。党務や政治活動は、本来は国会議員としての職務ではないが、実際には、公設秘書がこれらの業務の補佐まで行っていることが多い。 公設秘書の給与→公設秘書の給与については国会議員の秘書の給与等に関する法律を参照
秘書給与詐取事件と秘書給与献金問題過去に勤務実態のない「公設秘書」をあたかも勤務実態があるように衆議院に偽の書類を提出し、その上衆議院又は参議院から支給される「秘書給与」をだまし取って事務所経営等にあてた秘書給与詐取事件が発生している。 秘書給与詐取事件に関連して問題となるのが、議員が公設秘書に献金を強制する事例である。確かに政治資金規正法上は、年間5万円以上の寄付は報告書に寄付した者の氏名を記載する、1個人が1つの政治団体に年間150万円までなら寄付できるなどの条件をクリアできれば違法ではない。しかし、2004年5月19日以降は国会議員秘書給与法第21条の3において「何人も、議員秘書に対して、当該国会議員がその役職員又は構成員である政党その他の政治団体又はその支部(当該国会議員に係る後援団体を含む)に対する寄附を勧誘し、又は要求してはならない。」と規定されており、公設秘書に対する政治団体への寄附の強制や勧誘は違法である。また、公設秘書の任免という議員の職務に関して公設秘書から献金が行われた場合には、贈収賄が成立するとの指摘もある。 こうした秘書給与詐取事件を受け、公設秘書に関する情報の透明性を高めるため、2004年に与野党は、公設秘書の雇用情報(秘書の氏名、採用日、勤務地など)に関する文書の提出の義務化を国会で申し合わせた。しかし、2024年1月29日付の毎日新聞の報道によると、国会議員の公設秘書のうち552人について、雇用情報が公表されていなかったことが判明しており、ルール違反が横行していることが浮き彫りとなっている[1]。 一覧公設秘書給与を詐取したとして立件された例は以下の通り。特に辻元清美秘書給与流用事件は社民党党首秘書の起訴にまで発展し、注目を集めた。
公設秘書の兼職を巡る批判上記の秘書給与搾取事件を受けた2004年の国会議員秘書給与法の改正によって、公設秘書の兼職は原則禁止された。しかし、同時に国会議員が「職務に支障がない」と許可すれば兼職できるとの例外規定も設けられた[3]。民主党政権下の2010年1月には、衆議院予算委員会で公明党の富田茂之衆議院議員が、民主党所属衆議院議員の4分の1にあたる78人が公設秘書の兼職を認めていると指摘。富田が衆議院事務局に問い合わせたところ民主党以外でも、自民党の11人、みんなの党の2人などが兼職を認めており、鳩山由紀夫首相は「原則禁止という部分がやや骨抜きにされている。国会で議論してほしい」と答弁した[4]。 2017年8月には元政策秘書への暴言などで自民党を離党した豊田真由子衆議院議員が、後任の政策秘書として現職の青森県板柳町議会議員を採用していたことが報じられた[5]。町議が政策秘書としても報酬を得ることが批判を受け、秘書を辞職するに至った[6]。 2023年9月には日本維新の会の池下卓衆議院議員が高槻市議の男性2人を公設秘書に採用したにもかかわらず、国会議員秘書給与法で義務付けられた「兼職届」を提出していないことが報じられた。池下の事務所は「書類の提出を忘れていた」と釈明した[7]が、「国会議員要覧」を発行する民間出版社に対しては、兼職状態が解消されるまで公設秘書名を空欄のままで提出しており、識者からは「隠していたとの疑念を持たれても仕方がない」(岩井奉信日本大学名誉教授)との指摘も受けた[8]。同月21日には自民党の逢沢一郎・松本尚両衆議院議員、立憲民主党の福田昭夫衆議院議員も公設秘書に地方議員を採用していたことが報じられた。3人とも兼職届は提出していたが、秘書の採用時期や勤務地などの情報を示す「現況届」の提出をいずれも怠っていた[9]。いずれの秘書も同月末までに辞職し、兼職状態は解消された[10]。また、この時点での毎日新聞の調査では、公設秘書の兼職を認める国会議員は全体の29%となる205人おり、政党別では、自民党103人、立憲民主党43人、維新25人などであった[3]。10月20日、与野党は衆院議院運営委員会理事会で、国会議員の公設秘書と地方議員の兼職を禁止するとの申し合わせに合意した[11]。 在職中の事件によって起訴された公設秘書
その他
脚注
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