生化学 において、ラインウィーバー=バークプロット (英 : Lineweaver–Burk plot )は、酵素反応速度論 のラインウィーバー=バークの式のグラフ表示である。1934年にハンス・ラインウィーバー とディーン・バーク によって記述された[ 1] 。二重逆数プロット とも呼ばれる。
導出
ラインウィーバー=バークプロットは、ミカエリス・メンテン式
V
=
V
m
a
x
[
S
]
K
m
+
[
S
]
{\displaystyle V={\frac {V_{\mathrm {max} }[S]}{K_{m}+[S]}}}
の解析に有用なグラフ的手法である。
両辺の逆数を取ると、
1
V
=
K
m
+
[
S
]
V
m
a
x
[
S
]
=
K
m
V
m
a
x
1
[
S
]
+
1
V
m
a
x
{\displaystyle {\frac {1}{V}}={\frac {K_{m}+[S]}{V_{\mathrm {max} }[S]}}={\frac {K_{m}}{V_{\mathrm {max} }}}{\frac {1}{[S]}}+{\frac {1}{V_{\mathrm {max} }}}}
となる。上式においてV は反応速度、K m はミカエリス・メンテン定数、V max は最大反応速度、[S ] は基質濃度である。
使用と特徴
強力な計算機や非線型回帰 ソフトウェアが広く利用可能になる前、ラインウィーバー=バークプロットはK m やV max といった酵素反応速度論における重要な項を決定するために広く使われていた。グラフのy 切片 はV max の逆数と等しく、グラフのx 切片 は−1/K m を表わす。また、様々な酵素阻害の形式を視覚的な印象として素早く与える。
この両逆数プロットはデータの誤差構造を歪めるため、酵素反応速度論のパラメータを決定する方法として信頼できない。反応速度に関するデータを描写するためには今でも使用されているものの[ 2] 、非線型回帰あるいはヘインズ=ウルフプロット あるいはイーディー=ホフステー図 といったミカエリス・メンテン式の代替となる線型形式がパラメータの計算のために一般的に使われている[ 3] 。
酵素阻害の種類を決定するために使用すると、ラインウィーバー=バークプロットは競合 、非競合 、不競合 阻害剤を区別することができる。競合阻害剤は阻害を受けていない酵素と同じy 切片を持つが(競合阻害剤はV max に影響を与えないため、V max の逆数も変化しない)、2組のデータ間で傾きとx 切片に違いがある。非競合阻害剤は阻害を受けていない酵素と同じx -切片を与えるが(K m が影響を受けない)、傾きとy 切片が異なる。不競合阻害剤はy 軸とx 軸両方の切片に違いが出る。
問題点
ラインウィーバー=バークプロットは古い教科書では古典的に用いられているが、間違いが生まれやすい。y 軸が反応速度の逆数を取るため、測定における小さな誤差が増幅される。また、プロット上の多くの点がy 軸の右側に遠く離れた位置にあるため(溶解性に限度があるため [S] が大きな値を取れず、ゆえに1/[S] が小さな値を取れない)、x 切片およびy 切片を得るために大きな外挿 が要求される[ 4] 。
脚注
^ Lineweaver, H and Burk, D. (1934). “The Determination of Enzyme Dissociation Constants”. J. Am. Chem. Soc. 56 (3): 658–666. doi :10.1021/ja01318a036 .
^ Hayakawa, K.; Guo, L.; Terentyeva, E.A.; Li, X.K.; Kimura, H.; Hirano, M.; Yoshikawa, K.; Nagamine, T. et al. (2006). “Determination of specific activities and kinetic constants of biotinidase and lipoamidase in LEW rat and Lactobacillus casei (Shirota)”. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 844 (2): 240–50. doi :10.1016/j.jchromb.2006.07.006 . PMID 16876490 .
^ Greco, W. R. and Hakala, M. T., (1979). “Evaluation of methods for estimating the dissociation constant of tight binding enzyme inhibitors” (PDF). J. Biol. Chem. 254 (23): 12104–12109. PMID 500698 . http://www.jbc.org/cgi/reprint/254/23/12104.pdf .
^ Dowd, John E., and Douglas S. Riggs (1965). “A comparison of estimates of Michaelis-Menten kinetic constants from various linear transformations”. J. Biol. Chem. 240 (2): 863-869. PMID 14275146 .
関連項目
外部リンク
NIH guide , enzyme assay development and analysis