マルチプレイヤーおよびマルチ・インストゥルメンタリスト(multi-instrumentalist)は、音楽(主にポピュラー音楽)において複数の楽器の演奏が出来る演奏家の呼称[1][2]。また、「マルチ奏者」とも称される[3][4]。
定義
基本的には、(ボーカルを除く)複数の楽器の演奏が出来るプレイヤーを指す。ただし通常は、以下の条件が必要とされる。
- 各楽器が、基本構造の異なる物であること
- 例えば「ギターとキーボード」、あるいは「ギターとドラムス」。これに対して「ギターとベース」、あるいは「ピアノとキーボード」は、基本構造にあまり相違がないため、2者を演奏出来てもマルチプレイヤーと呼称される例はあまりない(ただし複数の種類のキーボードを駆使する演奏技法を「マルチ・キーボード」と呼称する場合がある)。
- 各楽器ごとに、一定以上のレベルの演奏能力を獲得していること
- 片方の楽器が卓越した演奏レベルを有しているのに対して、もう片方の楽器がコードを幾つか鳴らすことが出来る、という程度の能力である場合は、マルチプレイヤーと呼称される例はあまりない。
プレイヤーの例
曲ごとに異なる楽器を演奏
多重録音により1人でバンド・サウンドを作れる
- イーサーン (ギター/ベース/キーボード/プログラミング)
- ヴァルグ・ヴィーケネス (ギター/ドラムス/ベース/キーボード)
- エットレ・リゴッティ (ギター/ベース/キーボード/ドラムス)
- エイドリアン・ブリュー (ギター/ドラムス/ベース/キーボード)
- キース·ジャレット (ピアノ/オルガン/ギター/ベース/ドラムス/ソプラノ·サクソフォン/フルート/リコーダー/ハーモニカ/各種パーカッション)
- キャメロン・ルー (ギター/バンジョー/キーボード/シンセサイザー/鍵盤ハーモニカ/ウッドベース/ベース/ドラムス/パーカッション/プログラミング)
- グレアム・コクソン (ブラー。ギター/ベース/ドラムス/パーカッション/ピアノ/サックス/クラリネット)
- シャグラット (ギター/ベース/ドラムス/キーボード)
- ジョージ・コリアス (ドラムス/ギター/ベース/キーボード)
- ジェフ・リン (元エレクトリック・ライト・オーケストラ。ギター/ピアノ/シンセサイザー/エレクトリックベース/ドラムス/チェロ)
- スティーヴ・ウィンウッド (キーボード/ギター/ベース/ドラムス/マンドリン)
- スティーヴィー・ワンダー (キーボード/ハーモニカ/ドラムス/ベース/ギター)
- ダフ・マッケイガン (ベース/ギター/ドラムス/キーボード)
- ダン・スワノ (ギター/ベース/キーボード/ドラムス)
- トッド・ラングレン (ギター/キーボード/ベース/ドラムス)
- トーマス・サッコネン (ギター/ベース/キーボード/ドラムス)
- トム・ショルツ (ギター/キーボード/ベース/ドラムス)
- ピーター・テクレン (ギター/ベース/キーボード/ドラムス)
- ピーター·ハミル (キーボード/ギター/ベース/ドラムス)
- プリンス (ギター/ベース/ピアノ/キーボード/シンセサイザー/ドラムス/パーカッション)
- ベン・フォールズ (ピアノ/キーボード/ギター/ベース/ドラムス)
- ポール・マッカートニー (ベース/ギター/キーボード/ドラムス等。初のソロアルバム『マッカートニー』は、ポール・マッカートニー1人ですべての楽器を演奏した)
- ブレンドン・ユーリー (元パニック!アット・ザ・ディスコ。ギター/ピアノ/キーボード/ベース/ドラム/オルガン/ハープシコード/シンセサイザー。アルバム『ある独身男の死』では、ホーン・セクション以外の楽器をすべて演奏した[6])
- マイケル・ジャクソン (ギター/ベース/ピアノ/キーボード/シンセサイザー/ドラム/パーカッション/プログラミング)
- マイク・オールドフィールド (ギター/ベース/キーボード/パーカッション)
- ヤニ・ステファノヴィック (ギター/ドラムス/ベース/キーボード/オーケストレーション/プログラミング)
- ラルフ・タウナー(12弦スチール&6弦ナイロンギター、ピアノ、コルネット、フレンチホルン、シンセサイザー、パーカッション)
- レニー・クラヴィッツ (ギター/ドラムス/ベース/キーボード)
- ロジャー・テイラー (クイーン。ドラム/ギター/ベース/ピアノ/キーボード/シンセサイザー)
- ロバート・ワイアット (ドラムス/キーボード/ベース/トランペット。ドラマーだが、ソフト・マシーン時代の曲「Moon In June」の前半部はワイアット一人でドラム/キーボード/ベースを演奏している。転落事故で半身不随になってからは、ドラマーからシンガー/キーボード・プレイヤーに転向)
- 阿部義晴 (キーボード/ギター/ベース/ドラムス/トランペット/サックス)
- 磯貝サイモン (ギター/ピアノ/キーボード/ベース/ドラム)
- 忌野清志郎 (ギター/ベース/ドラムス/ハーモニカ/サックス/フルート/ウクレレ/ピアノ/マンドリン/キーボード/ホラガイ)
- 大瀧詠一 (ギター/ベース/ドラムス/ピアノ/パーカッション)
- 岡村靖幸 (ギター/ドラムス/ベース/キーボード/ピアノ/ハーモニカ)
- 奥田俊作 (ベース/シンセサイザー/ギター他)
- 奥田民生 (ギター/ドラムス/ベース/キーボード/サックス/ハーモニカ)
- 小山田圭吾(ギター/ベース/ドラムス/キーボード/シンセサイザー/パーカッション/テルミン/テノリオン)
- かまやつひろし (ギター/ドラムス/ベース/キーボード/シタール)
- 加山雄三 (ギター/ウクレレ/ドラムス/ベース/キーボード)
- 木幡東介 (ギター/ドラムス/ベース/尺八/トランペット/フルート)
- 桑田佳祐 (ギター/ベース/ドラム/パーカッション/キーボード/ハーモニカ)
- 斉藤和義 (ギター/ベース/ピアノ/ドラムス/パーカッション)
- 崎谷健次郎 (ピアノ/キーボード/シンセサイザー/プログラミング/ギター)
- 鈴木祥子 (ドラムス/キーボード/ギター/ベース)
- TAKUYA∞ (ギター/ベース/ピアノ/ドラムス)
- 田中ヤコブ (ギター/ベース/キーボード/ドラムス/ハーモニカ)
- 玉置浩二 (ギター/ベース/ドラムス/キーボード/パーカッション)
- 冨田恵一 (ギター/キーボード/ベース/サンプリング・ドラム)
- TOMOVSKY (ギター/キーボード/ベース/ドラム)
- 中村一義 (ギター/ベース/ドラムス)
- 西脇辰弥 (ギター/ベース/ドラムス/パーカッション/ハーモニカ/大正琴)
- 星野源 (ギター/マリンバ/ベース/ドラムス/ピアノ。「いち に さん」は、すべて一人で演奏。)
- 本田雅人(元T-SQUARE。サックス、フルート、トランペット等、管楽器全般/ギター/ベース/ドラムス/パーカッション/ピアノ/キーボード/シンセサイザー。アルバム「Carry Out」は、作曲から演奏、録音まですべて一人で制作)
- 布袋寅泰 (元BOØWY。ギター/ベース/キーボード/ピアノ/ドラムス/コンピューター・プログラミング)
- 細野晴臣 (ベース/シンセサイザー/マリンバ/ギター/ピアノ/ヴィブラフォン/パーカッション/三味線)
- 福山雅治 (ギター/ベース/ドラムス/パーカッション/キーボード/ピアノ/ハーモニカ)
- 降谷建志 (ギター/ベース/ドラムス/ピアノ/キーボード)
- 森高千里 (ドラムス/ギター/ベース/キーボード/リコーダー等。ドラムスは正確無比で個性的であり評価が高い。一人で楽曲の全パートを演奏した「ロックンロール県庁所在地」は特に話題となった)
- 山崎まさよし (ギター/ベース/ピアノ/ブルースハープ/キーボード/シンセサイザー/ドラムス/パーカッション/サンプラー/プログラミング)
- 山下達郎 (ギター/ベース/ドラムス/キーボード/シンセサイザー/パーカッション/シタール)
- 吉井和哉 (ギター/ベース/ピアノ/キーボード/シンセサイザー/ドラムス/パーカッション)
- 吉田達也 (ドラムス/キーボード/ギターの同時演奏も可能)
- 古屋葵 (ドラムス/ギター/ベース/キーボード)
特記事項
- 1960年代のフリー・ジャズ・シーンでは、シカゴの音楽組織「AACM」を中心に「多楽器主義」が提唱され、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ等、メンバー全員がマルチプレイヤーというバンドも登場。
- 1970年代のロックシーンでもマルチプレイヤーをフィーチャーしたバンドが多く、ジェントル・ジャイアントのようにメンバーのほとんどがマルチプレイヤーであった例もある。
- ステージやレコーディングで1種類の楽器だけを担当しているミュージシャンでも実は複数の楽器を演奏出来る人は多く、活動のメインであるバンドの傍らで行うソロ活動では複数パートを兼任するという例は非常によく見られる。
脚注