マイスモールランド
『マイスモールランド』は、2022年の日本・フランスのドラマ映画。監督はこれが初監督作となる川和田恵真[1]。在日クルド人問題を描いている[2]。映画初出演にして初主演となる嵐莉菜は、本作の演技を高く評価され、様々な賞を受賞した[3]。作中に登場する主人公サーリャの父・妹・弟は、演者である嵐莉菜の実の家族が演じた。 ストーリーサーリャは17歳の高校生。生まれた地を逃れて家族と共に来日し、幼い頃から日本で育ったクルド人である。母は数年前に亡くなり、今は父・マズルム、妹のアーリン、弟のロビンの四人暮らし。家庭ではクルド文化が強く、クルド人のコミュニティの中で生活していた。 そんなサーリャだったが、学校では普通の高校生として日本人の親友にも恵まれ、「日本人らしい」生活を送っていた。日本の小学校の先生になりたいという夢もある。 大学進学の資金を貯めるため、父に内緒でコンビニでバイトを始めるサーリャ。そこで同じ高校生の聡太と出会い,仲を深めていく二人。 しかしある日、サーリャの一家の難民申請が不認定となり、在留資格を失ってしまう。就労さえ禁じられたが、生きる為に働いた父は逮捕されて入管に収容された。アパートに子供だけで取り残されるサーリャたち。 不法就労でバイトをクビになり、聡太の親族から交際も止められるサーリャ。ビザが無いゆえに志望大学の推薦入学も断られ、家賃滞納でアパートからも退去通告を受けた。切羽詰まってデートのみのパパ活を試みるも、キスを迫られて逃げ出すサーリャ。 夜分にサーリャのアパートを訪ね、優しく励ます聡太。泣き崩れそうになるサーリャだが、幼い弟のロビンが帰宅していないことに気づき、探し回る一同。ロビンは寂しさでボンヤリしただけだったが、ロビンのために日帰り旅行を決行するサーリャ。 入管から出られず、どこにも居場所を失って帰国を決意する父マズルム。反政府デモへの参加で逮捕歴のある彼は、帰国すれば逮捕される身だった。しかし、親が日本を出れば、残るサーリャたち子供にはビザが下りる可能性があったのだ。 朝…絶望の中に光を見出そうとするサーリャの強い眼差しで物語は終わった。 エピソード本作のメインキャストにはクルド人の出演はない[4]。わずかにサブキャストに、結婚などにより在留許可を保有している在日クルド人が登場するのみである[4]。 ヒロインを演じた嵐莉菜は、オーディションで選出された[4]。嵐はクルド人ではないためクルド語も話せず、この映画をきっかけとして初めて、クルドを知り、クルドの文化に触れている[5]。嵐の母は日本人とドイツ人のハーフであり、父はイラクやロシアにルーツを持つ元イラン人(日本国籍取得済)である[4]。 ヒロインの家族(父、妹、弟)を演じたアラシ・カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、リオン・カーフィザデーらは皆、嵐の家族が家族役を演じたものであり、嵐と同じくクルド人ではない[4]。 キャスト
スタッフ
製作監督の川和田恵真が本作の企画を考え始めたのは2015年頃。ISISに立ち向かう若いクルド人女性兵士を見てクルド人に興味を持ち、在日クルド人問題を知る。 2017年から映画の企画を立ち上げ、在日クルド人への取材を開始。取材は2年に及んだ[1]。 本作は是枝裕和が率い、西川美和らが所属する映像制作者集団「分福」の企画会議から始まっており、是枝裕和の応援もあって実現した[6]。 はじめは在日クルド人に実際に出演してもらうことを考えたが、彼らの立場を危うくするため、断念。劇中の料理は協力を望んだ彼らの作ったものである[7]。 主人公・サーリャの家族(父・妹・弟)は実際の嵐莉菜の家族であり、家族四人で映画初出演となった[7]。 テレビドラマ版本作は公開に先駆け、2022年3月24日、NHK BS1にて国際共同制作ドラマ「マイスモールランド」として放送された。前編・後編に分割されている。前編:夜20時~20時50分、後編21時~21時49分放送。
小説版監督の川和田恵真自身が小説化。
受賞歴
出典
外部リンク
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