ドライブ・バイ・ワイヤドライブ・バイ・ワイヤ (drive-by-wire) は、自動車における運転制御システムの一種である。従来の機械式制御に置き換わり機械的仕事を電線内(電線=ワイヤ)を通る電気信号で制御するシステムのことであり、元は航空機の操舵システムであるフライ・バイ・ワイヤの転用である。変速機(シフト・バイ・ワイヤ)、ステアリング(ステア・バイ・ワイヤ)、ブレーキ(ブレーキ・バイ・ワイヤ)の電子制御は日産・スカイラインセダン V37のダイレクト・アダプティブ・ステアリングやいすゞ自動車のNAVi5などの開発・販売例がある。スロットルの駆動方式のみを指して電子制御スロットル(電制スロットル、電スロ)と呼ばれることもある。以下はスロットル・バイ・ワイヤのみ説明する。 スロットル・バイ・ワイヤの特徴と仕組みスロットル・バイ・ワイヤとは、従来の機械式制御に置き換わり、機械と電気を融合させ、スロットルの開度を物理的なケーブルではなく、電線内(電線=ワイヤ)を通る電気信号で制御するシステムのことである。
長所基本的にはローエミッション化と省燃費化に寄与する部分が大きい。 セミATやCVTを採用する車両は、変速機の制御とスロットル制御を協調させることで、現時点の速度に対するスロットル開度を常時監視し、大きく踏み込まれれば低いギアに落として加速(キックダウン)し、踏み込みが一定以上浅くなれば高いギア段に上げてエンジン回転数を抑え、省燃費運転を行いやすくしている。 近年[いつ?]では標準的となっているカム位相連続変化型の可変バルブタイミング機構を採用したエンジンでは負荷に合わせて吸気弁を遅閉じさせることで吸気量を制限し、スロットルを大きく開くことでポンピングロス低減や遅閉じミラーサイクルとすることなどが可能となるが、これらの制御を行うには可変バルブタイミング機構とスロットルの協調が必要となるためスロットル・バイ・ワイヤは必須となっている。同様にEGRにおいてもスロットルを協調させることでより大量、精密な導入が可能となるためEGRを積極的に利用するには必要な機構である。そのほか従来のケーブル式スロットルではアイドル制御に必要であったISCVを省けるなどスロットル周りを簡素化できるメリットもある。 また、スロットル・バイ・ワイヤを採用することで、アクセルケーブルの物理的劣化、操作の応答性の悪化などの問題が解消される。さらにスロットル・バイ・ワイヤのシステム自体は、たとえば踏力があまりない障害者などでも、調整によりスロットルの開度を健常者と同様に扱えるようにできる、負荷に応じた必要な量の燃料噴射しか行わないなど、車の運転を容易にする技術・環境対応技術の一部である。 機械的なリンクを排除できるため、座席だけでなくハンドルやペダルを車内で移動させることが可能になる。これを利用して後進時に運転席を後部に向ける機構として航空機用のトーイングトラクターに採用されている。 一方でパフォーマンス面においては、下記のF1での事例のようにピーキーなエンジンを使用しやすくする効果も期待できるほか、世界ラリー選手権においては、スバルが導入した際、それまでのワイヤー式のスロットルよりも素早いスピードでアクセルが反応することで、レスポンスが大幅に向上した[1]。 短所電子回路の故障時の挙動や、(実際に体感できるかどうかは別として)単純に機械的に繋がっていないことによるダイレクト感の喪失が懸念される。前述の非線形制御が行われていることと、運転者の意志としてアクセルペダルを踏み込むことと、サーボモータがスロットルを開く動作までのタイムラグが少なからずあることは、特にガソリンエンジンのMT車においては顕著であり、競技車両においてはその点が嫌われる場合もある。AT車の場合は運転者が意図しないギア段に変速することと関連している。 ただ、過去(キャブレターからインジェクションに移行した際やNAに対するターボエンジンの特性)にも、新しい技術として登場からしばらくは既存のフィーリングと比較して異質であるという批判がなされたことがあり、この技術も同様に改善が進むとともに、運転者の「慣れ」で解消されていく可能性はある[要出典]。 F1での利用F1においてはスロットル・バイ・ワイヤが積極的に採用されている。これは、F1のエンジン特性によるものである。 F1のエンジンは回転上限近くの狭い範囲でしかパワーが出ないようなピーク特性を持っており、物理的ケーブルによるシステムではアクセルがオン・オフのスイッチ的にしか働かなくなる。電子制御システムでは、アクセルの開度に応じてパワーが変化するように自在にマップを設定できるので、盛んに用いられている。1992年のF1第3戦ブラジルGPよりマクラーレンチームが実戦投入したMP4/7Aにて初めて採用された。 また、エンターテインメントとしてルノーチームなどはこのシステムを応用し、エンジンを使って楽曲の演奏を行ったことがある。 脚注
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