チャイナリスクチャイナリスクまたは中国リスク(英語: China risk)とは、中華人民共和国が抱える様々な矛盾や不均衡のことである[1]。 特に、外国企業(日本企業も含む)が中国国内で経済活動を行う際に生じるリスク(カントリーリスク)を指すことが多い[1][2][3]。 概要チャイナリスクの体系
商行為以外でのカントリーリスク
チャイナリスクが顕在化した事例
リスクの内容これについて、ジェームズ・マックグレゴールは、著書『中国ビジネス最前線で学ぶ教訓』で、以下のように述べている。
例えば『日経ビジネスオンライン』では、許可申請を少し変更したら、認可が下りるまでに4年かかった王子製紙のコメントのあとで以下のとおり結んでいる[8]。 王子製紙の篠田和久社長は今回の経験について、こう語る。
下記内容のいくらかは、中国脅威論と共通する部分が多い。
背景改革開放後、漸次的に共産主義の経済制度を資本主義化・市場化していく過程で、多くの企業が中国へ進出した。 しかし、共産主義のもとで形成されていた経済制度や既得権益と、資本主義の下で活動していた企業の利益は各所で衝突。中国での経営では文化の差を超えて独特の経営慣行が求められることとなった。 日本や欧米を始めとする先進国では、普通選挙に基づく民主主義が政治体制として採用され、法の支配の下で基本的人権が保障されている。 しかし、中国では中国共産党が事実上の一党独裁によって権力を掌握しており、市民の力によって中国の民主化を目指した1989年の六四天安門事件も、中国人民解放軍の投入によって阻止された。 改革開放後も一党独裁体制を放棄する兆候はなく、人民解放軍の一部を暴徒鎮圧向けに改編した武装警察やインターネットにも及ぶ情報検閲などによって強権的に維持されている。 現在まで、中国に次々と進出する日本企業は、チャイナリスクを考慮した行動や対策を行ってこなかった。 これは、「政治的・歴史的な緊張関係にとらわれず、未来志向の経済協力による日中融和を目指す」という姿勢、言い換えれば日本企業の利益最優先主義の姿勢によるものであり、またチャイナリスクを考慮した行動を取ることは裏を返せば中国当局を徒に刺激することでもあったためだ。 しかし、その日本企業が当てにしていた中国において、在留日本人が暴力事件に巻き込まれる事件が多発し、日本企業が地下鉄工事や道路建設において競争入札の門前払いを喰らうなど、日本人に対する差別が原因と思われる事態が次々と発生。 2005年に中国全土へ広がった反日デモは、その中でも特に顕著な例であり、日本の総領事館にまで投石などが相次ぎ、取締りを行うべき治安部隊がその行為を黙認、中国政府は「日本側の態度が暴動の原因として」謝罪や賠償責任まで否定する状況に至った。 影響中国でビジネスを行う企業にとってのチャイナリスクの問題は、主にリスクマネジメントなどの企業防衛の観点から、経営戦略上も決して無視することができない要素となっている。 特に日系企業の間ではタイやベトナム、インド、ロシアなど複数の新興国にも生産拠点を分散させたり、日本国内での生産に回帰する動きが広がっている(地方に工場を建設することで、製造業における雇用の促進にもなる)(下記チャイナプラスワンも参照)。 同様に、一般的な商取引においても日本企業と中国企業の間に、タイ・ベトナム・中華民国などの関連企業や商社を仲介させるといった手法により、中国との間に「中間となる存在」をワンクッション以上挟みこむことで、若干のコスト上昇するマイナスよりもひと度トラブルが勃発すれば巨額の経済的損失や知的財産の流出を発生させ企業の経営自体を揺るがしかねないリスクやチャイナ・ハラスメントの低減を優先させる動きもある。 知的財産権に対する認識の低さ、知的財産である先端技術の流出や模倣、中国産製品にまつわる品質面の諸問題などは経営戦略において軽視できない問題であり、これを警戒して、中国での製造は先端技術を用いないローエンドモデルの製品に限定したり、あるいは一部のパーツや組立用部材のみの製造にとどめ、日本国内や他の新興国の拠点でその後の最終組立を行っている企業や、先端技術を用いる最新機能を持つ製品やハイエンドモデルは知的財産の漏洩防止措置が配された日本国内の拠点で製造するという企業も存在している。 また、ハイエンド製品ではなくとも、より高い信頼性を要求される業務用向けなどの製品については中国以外の製造ラインを使用する企業もある。 パソコン業界でも、ローエンド帯の製品を主力商品としているオンキヨー(旧ソーテック)やMCJ系のマウスコンピューター・ユニットコムなどは、一時期「MADE IN CHINA」というイメージが根強かった大手家電メーカーのローエンド製品と暗示的に比較する形で、「日本国内の工場で製造している」という『安心感』を主要なセールスポイントの1つとして謳っている[注 1]。現在ではノートパソコンを中心に富士通など一部の大手家電メーカーも日本国内でのマザーボード製造・本体組立に回帰する傾向を見せている。 また、原材料・部品や鉱物資源・レアアースの輸入においても、2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件後に中国が行った輸出規制以降、中国政府の資源供給を政治的武器として使用する姿勢や中国の国内情勢そのものをリスク要因と捉えて、中国国内への一極集中の依存から脱却し、中国以外の国からも安定的な入手が可能になる様に入手経路の構築を図ったり、レアアースレス(レアアースの不使用・使用量減)やリサイクル技術・代替品の開発・研究を行うなど、「中国離れ」を模索する動きが各産業で見られる様になった。この結果、中国のレアアースの日本向け輸出量は2011年に前年比34%減を記録し、その後も減少傾向にある[9]。 チャイナプラスワンチャイナリスクを回避するためのリスクマネジメントの手法の1つにチャイナ・プラス・ワン(China plus one)、あるいは中国プラス1がある。 これは中国向けの投資やビジネスを行いつつもあえて中国一国に集中させず、平行して他の国においても一定規模の投資や商取引を展開し、リスクの分散化と低減を図る企業動向である。 中国以外の他国の候補地としては、インドやベトナムなど他のアジア諸国が多い。 中国の製造業への投資が近年鈍化傾向となった要因の一つとして指摘されている[10]。 過去に起きた事例
脚注注釈
出典
関連項目
外部リンク |