ダニッチダニッチ (Dunwich) あるいはダンウィッチは、怪奇小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品に登場する架空の村。 概要アメリカ合衆国マサチューセッツ州北部の丘陵地帯に位置する寒村。アーカムの西方に位置する。港町キングスポートからミスカトニック川を上流に遡り、アイルズベリイ街道に沿って進むとダニッチ村に到達する。頂上に環状列石が残るラウンド山の斜面と川の間に、廃屋同然の家が建ち並んでいる。 18世紀までインディアンが土着の儀式を執り行い地響きのような音が聞こえたと伝えられる。1692年にセイラム魔女事件が起こり、ビショップ家、ウェイトリー家などが移り住んで来た。外部との交流は少なく、少数の村人が代々近親婚を重ねつつ退廃的な生活を送っていた。周囲30マイルの村落で最も古い建物である1700年以前のビショップ家の地下室の煙突がある一方、ダニッチで最も新しい建物は、1806年の滝に作られた水車の廃墟となっている。 1928年に起きた怪事件の後、ダニッチへの道標はアイルズベリイ街道から取り払われた。その顛末は、ラヴクラフトの作品『ダニッチの怪』で語られている。 センティネル丘の祭壇環状列石に囲まれたテーブル状の平石からなる遺跡。ここから物語が始まり、終わった場所。ダニッチのラウンド山の頂にある。付近の谷底は、悪魔の舞踏園と呼ばれ、植物が生えず悪臭が立ち込めていて何かが突進してくるような一定のリズムで大きな物音が響いている。ダニッチでもっとも古い建物でインディアンが作ったと信じられている。遺跡から大量の人骨が発見され、原住民のインディアン、ポクムタック族の埋葬地だったという俗説の裏付けといわれているが学者によれば白人の骨であるらしい。 夜鷹ウィップアーウィルダニッチ土着の風説で恐れられる夜に活動する夜鷹ウィップァーウィルヨタカの一種。暖かい夜に人の死期を察知して鳴き、死者の魂を捕まえようとするといわれている。死者の魂を捕まえることに成功すると群れが一際大声で朝まで鳴き続けるが、失敗して魂を逃すと気がつかないうちに静かになって飛び去ってしまう。 オズボーン雑貨店ダニッチ唯一の商店。『ダニッチの怪』作中で度々、描写がある。店主のジョー・オズボーンは、ヘンリー・アーミテイジ博士らによる透明怪物事件解決の顛末を見守った。 ダーレスが執筆した後日談『閉ざされた部屋』[2]『恐怖の巣食う橋』[3]では、トバイアス・ウェイトリーが雑貨店を経営している。この点について、店がオズボーン家からウェイトリー家の物に変わったという経緯情報が完全に欠落していると指摘されている[4]。 ウェイトリー家ダニッチの中心から4マイル、最も近い家からも1.5マイル離れた山腹の斜面に建った大きな農家だが使われていない部屋が数多くある。ウェイトリー家の幾つもある分家の一つで、魔術翁、娘のラヴィニア、男孫のウィルバーの3人家族。1928年の事件で一家は、全滅した。1913年・1923年・1927年に大規模な改築を行い天井や壁、1階と2階の床などを取り外して家屋に大きな空間を作り、窓を木板で塞いだ。代わりに一家は、納屋を修理して書物など家具類も徐々に移し、最終的にそちらで暮らしていた。毎月のように牛を購入していたが10~12頭より増えることはなく、痩せ衰えて傷と皮膚の爛れた牛が転げ落ちそうな斜面で草を食べている様子が目撃されている。 後続設定ウェイトリー家に加えて、オーガスト・ダーレスの作品ではビショップ家という一族が登場する(後述)。またダーレス設定では、ダニッチはアーカムの近隣にあり[5]、アイルズベリイという町もある[6]。 クトゥルフ神話TRPG『ダニッチの怪』では、ダニッチの地下には太古にミ=ゴによって召喚された邪神アブホースが潜む[7]。 登場作品
→詳細は「ダンウィッチの怪」を参照
作中の出来事
関連人物ウェイトリー家の人物セイラム事件でミスカトニックに移住したウェイトリー家には、ダニッチ近郊に親族が多数いる。同姓の人物が登場することも珍しくなく、『ダニッチの怪』本編中に限定しても何人も登場している[9]。
→詳細は「ダンウィッチの怪」を参照
ビショップ家の人物ダニッチおよびアイルズベリイ一帯に住む一族。もとは名家だったが衰退した。[13]
発音とカナ表記イギリスのサフォーク州に実在するDunwich(en:Dunwich参照)、オーストラリアのノースストラドブローク島に実在するDunwich(en:Dunwich, Queensland参照)はイギリス英語式で[ˈdʌnɪtʃ] と発音されることから、日本においてはダニッチ表記となる。 ラヴクラフト作品においては、アメリカ英語式に[ˈdʌnwɪtʃ](en:Dunwich (Lovecraft)参照)と発音されることもあるから、こちらに従えばダンウィッチ表記を用いる。なお、アメリカにおいてもマサチューセッツ州を含むニューイングランドではイギリス英語式の発音になることがある。 日本の小説家菊地秀行はアメリカにおいてクトゥルフ神話ファンの集まりに参加した際に、「ダニッチ」発音を繰り返していたら、明示的に2語に分け「ダン・ウィッチ」と訂正された体験をした旨を作品の後書きにて記している[15]。 脚注【凡例】
注釈出典
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