コロノサウルス
コロノサウルスはカナダ王国アルバータ州の白亜紀後期の地層から発見されたケラトプス類に属する恐竜。セントロサウルスと近縁であり、フリルには奇妙な形状の独特の装飾が備わっていたことで知られる[1]。角竜下目の下位分類でケラトプス科とプロトケラトプス科、グラキリケラトプスを内包するとされるコロノサウルス類 coronosauria を代表する恐竜でもある[2]。 解説コロノサウルスは中型のケラトプス類である。2010年にグレゴリー・ポールによって、全長5m、体重2tと推定された[3]。 成体は上眼窩角をもっているが、ズニケラトプスやカスモサウルス亜科やアルベルタケラトプスやディアブロケラトプスに代表されるような原始的なセントロサウルス亜科のものほど長くはない。その角は眼窩を越えて横に伸びる。一方、亜成体の上眼窩角はピラミッド型で、遠位上方半側にわずかな側方屈曲を伴う。コロノサウルスはフリルの縁を装飾する縁頭頂骨の形状から、ケラトプス類の中でも一際個性的であるとされる。それらは個体発生、すなわち成長に伴い、短いスパイク状に発達する。そのスパイクは隣接する装飾に沿って大きく不規則な形状の骨塊になる。その形状はイソギンチャクに例えられる。この構造はフリル中央に近い第一の縁頭頂骨(P1)の基底部に密集し、フリルのそれぞれの側に左右に大きく広がり、末端は下に向かって伸びる。それらはP1を素材とし、融合することによって複合された縁頭頂骨を成す。より外側に形成される第二対の縁頭頂骨(P2)についても同様である。 P1の基底部はP2の位置にまで達する。コロノサウルスは第三対の縁頭頂骨P3 においても独特である。それはフリルのカーブに沿って短い舌のようなフック、あるいは先細りのスパイク状に、個体によって多様な発達をする[2]。この特徴がなければ、コロノサウルスは形態的にセントロサウルスかスティラコサウルスとして認知されただろう。例えば、鼻骨はセントロサウルス・アペルトゥスの幼若個体や亜成体および準成体のそれによく似ており、同様の個体発生を示したものと思われる。それは全てのセントロサウルス類がそうであるように、外部鼻孔後部に位置する。幼若個体にしろ成体にしろ、全ての標本は前方または後方に向かって伸びる鼻骨を備えており、ほとんどの標本では先端がわずかに尾側(後方)に曲がっている[1]。 発見と命名コロノサウルスはベリーリバー層群のオールドマン累層上部で見つかった二つのボーンベッドから知られている。北米のほとんどのケラトプス類の標本は、アルバータ州の州立恐竜公園の BB138 そして同じくワーナー近郊の MRR BB を除き、オールドマン累層とそこから 14.6km離れたダイナソーパーク累層から発見される。コロノサウルスのボーンベッドは1996年から2000年にかけてフィリップ・カリーによって発掘された[4]。 双方の標本はアルバータ州ドラムヘラーのロイヤル・ティレル古生物学博物館に運ばれた。ホロタイプは TMP 2002.68.1で、左のP1からP3までと部分的な右のP1とP2が揃ったフリルを備えた、ほぼ完全な大型の成体サイズの頭頂骨である。ただしフリルの正中線上の縁を構成する後端の装飾を欠き、 上眼窩角は紙のように薄くなっている。ライアンとラッセルが記載した他の標本には TMP 2002.68.3 (頭頂骨)、 TMP 2002.68.10 (上眼窩)、そして TMP 2002.68.5 (上眼窩角)がある[2][1]。 コロノサウルスの模式種は最初にライアンらが記載した時点で、セントロサウルス・ブリンクマニという名前だった(2005)。彼らはいくつかの解剖学的な分析の結果から本種がセントロサウルス属ではなく独自の属であるとし、2012年に新属コロノサウルスを設立した。属名はラテン語で「冠」を意味する corona (特徴的なフリルの装飾からの連想)と「トカゲ」を意味する古代ギリシャ語 saurosの組み合わせで、「冠トカゲ」の意である。種小名はアルバータ州の古環境学者ドナルド・ブリンクマンへの献名である[1]。 分類ライアンらによる原記載ではコロノサウルスは、系統発生の分析に基づいてセントロサウルス属の新種であると考えられた。 当時、セントロサウルス亜科には9属のタクサと17項目の形質が含まれていた。2011年、コロノサウルス(セントロサウルス・ブリンクマニ)とC. アペルトゥス(セントロサウルスの模式種)はセントロサウルス族に分類され、同時にスティラコサウルスや他のセントロサルス亜科のメンバーがより派生的であり、よりパキリノサウルスに系統的に近いことがわかった。 アンソニー・フィオリッロとロナルド・ティコスキはカリーの2008年の分析を改定し、C.ブリンクマニのようなタクサを含めるためにセントロサウルス亜科に共通の形質を54項目に増やした。彼らはC.ブリンクマニがスティラコサウルスとC.アペルトゥスの姉妹群であると考え、同時にパキリノサウルスや他の派生的なセントロサウルス亜科はそれらから系統的に分けられた。この分析はセントロサウルス亜科の単母性を否定するものである[5]。 後の2011年、ファルケらは97の形質的特性を用い、スピノプスという新たな属を設けた。スピノプスはセントロサウルス・アペルトゥス、C.ブリンクマニ、そしてスティラコサウルスとは別系統であり、それぞれ単系統でないことが指摘された。同時にC.ブリンクマニは分析の精密性を上げるために除外された[6]。 結局ライアンらは2012年に分析を改め、ファルケらによる2011年のデータマトリクスと同じものを用い、ゼノケラトプスの系統的位置づけについて言及した。恐らくいくつかのタクサで標本の直接観察で見落としていた形質があったため、この際に追加された。例えば、5つの追加の形質がC.ブリンクマニの為に加えられている。系統樹では、スピノプスとC.アペルトゥスはより進化した位置づけとなっており、スティラコサウルスの姉妹群とされている。この際に新属「コロノサウルス」が記載された。以下のライアンらによる2016年のクラドグラムはセントロサウルス亜科内のコロノサウルスの位置付けを示す[7]。
出典
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