イギヨンベイギヨンベ(朝鮮語: 이기、용배)は、韓国の男性音楽プロデューサーグループ、作詞・作曲・編曲家である。 メンバー「オレオ」「仮面ライダー」「TENTEN」「PAPERMAKER」などの名義で発表された曲も、イギヨンベ関連楽曲として扱う。
概要2010年代以降のK-POPを代表するヒットメーカーである。 「イギヨンベ」としての最初の楽曲提供は、「Heaven」(歌:Ailee、2012年)だった。「Heaven」の共同作詞、作曲を手がけた歌手フィソンは、ソ・ヨンベが所属しているRBWの代表プロデューサーである作曲家キム・ドフンと作業を共にする関係だ。そしてMAPPSエンターテイメントの代表プロデューサーであるイ・ヒョンスンも、キム・ドフンと作業を共にしてきた関係であり、イギの師匠でもある。 「イギヨンベ」のローマ字表記は、“SYB & IGGY”“IGGY YONGBAE”[2]“IGGY,SYB”などと、曲ごとに異なる。“SYB”とは、ソ・ヨンベのローマ字表記“SEO YONG BAE”の頭文字を取ったものである。 「イギヨンベ」の活動とは別に、イギが率いているグループ「オレオ」、ソ・ヨンベが率いているグループ「仮面ライダー」「TENTEN」の活動も同時並行してきた。2020年代初頭には、イギ、ウンキムは、所属事務所をPAPERMAKERへと移籍し、楽曲クレジットでもPAPERMAKER名義を使うようになった。同時期に、イギは本名の「イム・スホ」名義を使うことが多くなった。 狭義の「イギヨンベ」は、イギ、ソ・ヨンベの2人組である。しかし、「オレオ」「仮面ライダー」「PAPERMAKER」などの活動の実態を考慮すれば、イギ、ソ・ヨンベを中心に、複数のミュージシャンとチームを組んで楽曲制作をしてきた、広義の「イギヨンベ」として理解するのが妥当だろう。 イギは、2017年度からソウル芸術実用専門学校実用音楽科の教授として出講している[3]。同校のインタビューによると、姉が好んでいた、ポップ、ヒップホップ、クラシックなど多様な音楽に影響を受けた。高校の時にギターを始め、大学の講義をきっかけに作曲を始めた。大学在学時には、ロッテワールドで毎年サークルコンテストが開催され、友達と組んだバンドによる自作曲で賞金をもらった。大学で出会った後輩の男性ボーカルグループ「キルグボング」のメンバーであるボングが、音楽的師匠である作曲家イ・ヒョンスンを紹介してくれた。本名を「イム・ジョンイク」から「イム・スホ」に改名したのは26才の時である。「イギ」のペンネームは、以前の本名「임종익」を、종익이→이기ともじったものである。イギが率いている「オレオ」のグループ名には、いつまでも良い音楽にしようという意味が込められている[4]。 ソ・ヨンベは、もともとはアンダーグラウンドでラップをしており、自作曲を手がけていた。軍隊に行って、ラップに素質がないことを感じ、作曲家をやってみたいと思うようになった[5]。 2012~14年には、Pledisエンターテインメント(のちにHYBE子会社)の所属グループである、Orange Caramel、 NU'EST、Hello Venusへの楽曲提供が多かった。 2015年にデビューした、SOURCE MUSIC(のちにHYBE子会社)所属の女性グループGFRIENDでは、1stミニアルバム「Season of Glass」の表題曲「Glass Bead」(2015年)から、リパッケージアルバム「RAINBOW」の表題曲「SUMMER RAIN」(2017年)に至るまで、イギヨンベが連続して、アルバム表題曲の作詞・作曲・編曲を手がけ、大ヒットを連発した。GFRIENDの「Me Gustas Tu」(2015年)と「Rough」(2016年)の2曲連続で、ストリーミング再生回数が1億回を突破した[6]。「Rough」は、韓国ガオンチャートによる2016年の年間デジタルチャート3位[7]。韓国のテレビ音楽番組における2016年の1位獲得回数は、「Rough」の15冠、「NAVILLERA」の14冠を合わせて計29冠を獲得し[8]、翌2017年にTWICEが5曲で計36冠を獲得する[9]まで、歴代女性グループ最高記録だった。 2018年以降に発表されたGFRIENDのアルバムでは、イギヨンベはアルバム表題曲を手がけなくなったが、それでも楽曲提供は、日本盤アルバム「Fallin' Light」(2019年)まで続いた。7thミニアルバム「FEVER SEASON」(2019年)表題曲「熱帯夜(Fever)」では、イギのグループ「オレオ」が手がけた。GFRIENDは2021年に解散したが、翌2022年に元メンバーのウナ、シンビ、オムジが結成したグループVIVIZ、同年にソロ歌手デビューした元メンバーのイェリンに対して、イム・スホ(イギ)などPAPERMAKER所属作家が楽曲提供している。 2017年の「第1回Soribada Best K-Music Award」では、「新韓流プロデューサー賞」を受賞した[10]。 歌手・グループのデビュー曲を、イギ、ヨンベのいずれかが手がけた事例としては、「Heaven」(歌:Ailee)、「Glass Bead」(歌:GFRIEND)、「ダークサークル」(歌:CoCoSoRi、2016年、仮面ライダー名義)、「Hide & Seek」(歌:ASTRO、2016年)、「MoMoMo」(歌:宇宙少女、2016年、ソ・ヨンベ名義)、「Let Me In」(歌:ハスル(今月の少女)、2016年、オレオ名義)、「꿈을 Dream[11]」(歌:Real Girls Project、2016年、仮面ライダー名義)、「Catch You」(歌:P.O.P[12]、2017年)、「Touch」(歌:SoRi、2018年、仮面ライダー名義)、「NEON」(歌:ユキカ、2019年、オレオ名義)、「BIM BAM BUM」(歌:Rocket Punch、2019年)、「BOP BOP!」(歌:VIVIZ、2022年、PAPERMAKER名義)などがある。 イギヨンベは、アイドルグループへの楽曲提供が多いが、ゲーム音楽も手がけている。韓国のオンラインゲーム「テイルズランナー」シリーズの曲では、声優のチャン・イェナ[13]が、ゲームのキャラクター「ララ」[14]に扮して歌唱した曲「風になる」「Dear My Friend」(いずれも2018年)「LALLA」(2019年)。「テイルズランナーアンダーワールド」で使用された曲「平行線」(2020年、歌:クォン・ジナ)。「テイルズドリーム」で使用された曲「このこだまの終わりについて行くならば」(2021年、歌:イェウンfeat.モンク)などである。 イギヨンベの楽曲提供対象は、韓国内のみにとどまらない。2015年に香港の女性グループAs Oneへ提供した「Candy Ball」は、中国語・韓国語双方のバージョンが制作された。この曲は、同じく香港の女性グループLolly Talkが、2021年にカバーした。 日本との関係この項目では、イギヨンベ関連楽曲に、日本語の歌詞が付けられた事例。日本人歌手、日本人が在籍するグループへの楽曲提供。日本人の作詞・作曲家との共作などの事例について述べる。 日本のアイドルグループの曲では、ジャニーズ事務所所属の男性グループKis-My-Ft2の「Catch & Go!!」(2012年、アルバム「Kis-My-1st」収録)、「FIRE!!!」(2014年、アルバム「Kis-My-Journey」収録)、ライジングプロダクション所属の女性グループだったフェアリーズのシングル曲「White Angel」(2012年)、「BLING BLING MY LOVE」(2014年)の作曲を、イギヨンベが手がけた(いずれも日本人作曲家と共作)。 最初に韓国語バージョンが発表され、のちに日本語バージョンが発表された事例としては、「Heaven」(歌:Ailee)、「Glass Bead」「Me Gustas Tu」「Rough」「NAVILLERA」「LOVE WHISPER」(いずれも歌:GFRIEND、日本向けベストアルバム「今日から私たちは 〜GFRIEND 1st BEST〜」収録)などがある。GFRIENDの日本オリジナル曲「Fallin' Light」(2019年)は、日本人作曲家のCarlos K.が、イギヨンベと共作した。 日本のゲーム「アイドルマスターシリーズ」を原作とした韓国のドラマ「THE IDOLM@STER.KR」で結成された女性グループReal Girls Project(2016~17年)では、ソ・ヨンベのグループ「仮面ライダー」が複数の楽曲を提供した。Real Girls Projectに参加した日本人の寺本來可(ユキカ)は、プロジェクト終了後の2019年に韓国でソロ歌手デビューし、デビュー曲「NEON」は、イギのグループ「オレオ」が提供した 。 日本人メンバー3人が在籍するTWICEには「AFTER MOON」(オレオ名義、2018年)などを提供した。 日本のAKB48グループが参加し、IZ*ONEメンバーを選考したオーディション番組「PRODUCE 48」(2018年、Mnet)では、「1000%-SummerWish」(オレオ名義)、「To reach you」(イ·サンホ、ヨンベ(仮面ライダー)名義)、「As I Dream(夢を見ている間) 」を提供した。PRODUCE 48の第8回では、イギのグループ「オレオ」[15]と、ソ・ヨンベのグループ「仮面ライダー」[16]が、VTRで登場した。「As I Dream」の日本語バージョンは、秋元康が作詞した。 IZ*ONE結成後では、「DESTINY」(2020年)、「Slow Journey」(2020年)、「Lesson」(2021年、作詞:秋元康、作曲:チェ・イェナ、イギ、ウンキム)を提供した。 高橋朱里は、PRODUCE 48出演をきっかけに、AKB48を卒業してRocket Punchのメンバーに転身した。Rocket Punchの「BIM BAM BUM」(2019年、日本語バージョンは2021年)、「JUICY」(2020年)などの曲も、イギヨンベが提供した。 楽曲の特徴シンセサイザーを使用した電子音が主体の曲や、ストリングスなどの生楽器を使用した曲など、編曲(アレンジ)の作風は幅広い。 GFRIENDの「Me gustas tu」と「Rough」は、ストリングスと、エレキギターによるディストーションサウンド(ギター演奏:チョン・ジェピル(정재필))[17][18]を駆使したアレンジである。 「Shower」(歌:INFINITE、2014年)「On the road」(歌:DIA、2016年)、「Fall In Love」(歌:GFRIEND、オレオ名義、2016年)、「To Heart」(歌:fromis_9、2018年)、「ハヌルハヌル」(歌:MAMAMOO、2018年)、「NEON」(歌:ユキカ、オレオ名義、2019年)などは、ストリングスと、デジタルビートを組み合わせたアレンジの曲である。 「Summer Rain」(歌:GFRIEND)では、イントロで、シューマンのソナタ集「詩人の愛 op.48-1」を引用した[19]。 イギヨンベ関連楽曲のストリングスアレンジは、クォン・ソコン(권석홍)が手がけていることが多い。クォンは、ソ・ヨンベと同じく、RBWに所属している[20] 。2018年の報道によると、クォンは過去に1300もの楽曲を手がけ、平昌オリンピックの受賞式で使われた音楽も担当した[21]。 イギヨンベ関連楽曲で、ストリングス演奏を担当することが多い「ユンストリングス(융스트링)」は、BIGBANG、AFTERSCHOOL、EXOなど、K-POPの楽曲を数多く手がけてきた[22]。 K-POP界全体の傾向としては、2008~12年ごろは、「勇敢な兄弟」「新沙洞の虎」などの作曲者による、「短調+電子音」の楽曲が活況を呈したが、13年以降は、徐々に「長調+生音」が好まれるようになってきた。イギヨンベの楽曲では、全く同じ音で構成される音列を使って、長調から短調、短調から長調などと調を変える「平行調転調」の使用が多い[23]。 2016年7月にオーマイニュースが配信した記事で、キム・サンファは、GFRIENDの「Me gustas tu」「Rough」などについて、「1990年代の日本のアニメーション主題歌を連想させる軽快なポップロックサウンド」と評した[24] 。「NEON」(歌:ユキカ)は、日本の1980年代風シティ・ポップのような曲調である[25]。 「하늘 아래서(ハヌル アレソ/空の下で)」(歌:GFRIEND、2015年)、「하늘하늘(ハヌルハヌル)」(歌:MAMAMOO)など、曲名や歌詞に「ハヌル」(日本語訳は「空」「天」)という単語を使用した事例が多い。 イギヨンベ名義の楽曲共作者の表記が無い曲は、いずれも作詞・作曲・編曲:イギヨンベである。 2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
2018年
2019年
2020年
2021年
2022年
オレオ名義の楽曲この項目の楽曲は、原則として作詞・作曲・編曲:オレオだが、「イギ、C-no、ウンキム」と、個人名が表記されている場合もある。 2015年
2016年
2017年
2018年
2019年
2020年
2021年仮面ライダー名義の楽曲個人名の表記が無い曲は、いずれも作詞・作曲・編曲:仮面ライダーである。 2016年
2017年
2018年
2020年
TENTEN名義の楽曲この項目の楽曲は、原則として作詞・作曲・編曲:TENTENである。 2018年2019年
PAPERMAKER名義の楽曲2022年
他の楽曲2014年
2015年
2016年
2017年
2018年
2020年
2021年
2022年
2023年
脚注
外部リンク
|