アマリリス
アマリリス(英語:Amaryllis)は、ヒガンバナ科ヒッペアストルム属 Hippeastrum の植物の総称、原種は中南米・西インド諸島に約90種があり、数百種類の園芸品種が作出され、現在もその数は増え続けている。学名のヒッペアストラムはギリシア語で騎士の意味のhippeos(ヒッペオス)と星、astron(アストロン)から、アマリリス Amaryllis は旧属名であり古代ギリシャやローマの詩に登場する羊飼いのアマリリスから取られている。 学名上の園芸品種の総称はヒッペアストルム・ヒブリドゥム Hippeastrum × hybridum 。 地中に鱗茎を形成する多年草で初夏にユリに似た基本的に六弁の大きい花を2 - 4個つける。花の色は白・赤・薄紅・淡黄など。現在販売されている球根には八重咲きのものも多い。また、通常の花は横向きだが、上を向いて咲く受け咲き種、香りのあるものも作られている。 18世紀初頭に南米からヨーロッパに生体がもたらされた後、1799年にイギリスの時計職人アーサー・ジョンソン(Arthur Johnson)の手により ヒッペアストルム ヴィッタツム Hippeastrum vittatum(和名ベニスジサンジコ) とヒッペアストルム レジナエ H.reginae (和名ジャガタラズイセン)が交配され、最初の種間交配による園芸品種ジョンソニー Hippeastrum × johnsonii が誕生する、その後原産地から様々な原種が発見・導入されると同時に様々な園芸品種が作出された、1870年頃には現在園芸店で販売されているような巨大な大輪品種が誕生する。 また、ヒッペアストラム属にかつて属していた希少植物でブラジルのリオデジャネイロ州のごく一部地域に分布する一属一種のウォルスレヤ プロケラ Worsleya procera シノニム Worsleya rayneri もブルーアマリリスの名で呼ばれる。 日本には江戸時代末期に、キンサンジコ(金山慈姑) Hippeastrum puniceum、ジャガタラズイセン(咬吧水仙) 、ベニスジサンジコ(紅筋山慈姑)の3種が渡来している。 また、戦後に大輪品種が普及する以前に導入されて、現在販売されることは殆どないが農家の庭先などに今も見ることができる中型で剣弁咲きものを在来種として区別する場合がある、これは古くからあるという意味でもちろん日本原産ではない。 春植え球根の代表種であり、こぶし大の球根は成長が早く4月に植えると1ヶ月後には開花する(例外的にシロスジアマリリス Hippeastrum reticulatum var. striatifolium 等、秋に咲くものも存在する)。植え付け、植え替えはソメイヨシノが散る頃が適期である。 ヒガンバナ科のほかの植物と同じく、球根などにリコリンを含み有毒。 アマリリスという言葉について「アマリリス(Amaryllis)」という言葉は世界中で広く使われているが、学名を意識して考えるとややこしいことになっている。 一般的な人が「アマリリス」という場合は、冒頭に述べたようにヒッペアストルム属を指すが、Hippeastrum 属であるのに「アマリリス」というのは、かつてアマリリス属 Amaryllis に分類されていた名残である。 また、Amaryllis 属というものがあるのに、Hippeastrum 属の和名をアマリリス属としている場合があり、混乱があるようである。 似たような例でペラルゴニウム属 Pelargonium の園芸品種が園芸上では旧属名の「ゼラニウム Geranium 」と呼ばれている。 Amaryllis属の植物、すなわち「本来のアマリリス」とでも言うべきものは、南アフリカ原産のホンアマリリス Amaryllis belladonna(別名アマリリス ベラドンナ、ベラドンナリリー、ネイキッドレディー)とアマリリス パラディシコラ A. paradisicola の2種しかない、ホンアマリリスは日本には明治時代末期に渡来しており、現在ではヒッペアストルム属のものに比べるとほんの僅かではあるが原種及び数種の園芸品種が夏植え球根として販売されている。 又、一般的にいうアマリリス(ヒッペアストルム属)にもヒッペアストルム ベラドンナ Hippeastrum 'Belladonna' [1]という園芸品種が存在しアマリリス ベラドンナ Amaryllis 'Belladonna'の名前で販売されているので、余計にややこしい。 また、ブルーアマリリス(学:Worsleya procera)と言う植物もあるが、アマリリス属、ヒッペアストルム属、いずれも遠縁の種である。(ブルーアマリリスはグリフィニア連に属する。) アマリリス (ヒッペアストルム属) とホンアマリリスの違い一般に言うアマリリス(ヒッペアストルム属)の多くの種が花期も葉を展開させるのに対し、ホンアマリリスは開花時にはヒガンバナのように地上部に葉がない。(但し冬季に出回る開花処理された球根や植え付け初年度の球根は花茎のみが上がる場合がある) ヒッペアストルム属の花茎がストローのように空洞であるのに対してホンアマリリスはそうではない。 多くのヒッペアストルム属の花は咲き進むと雌しべの先は大きく三裂するが、ホンアマリリスはしない。 前述にあるように、ヒッペアストルム属は中南米原産であるのに対し、ホンアマリリスは南アフリカ原産であり両者ともヒガンバナ科ではあるが縁は遠い。 近年のゲノム解析の結果、ヒッペアストルム属は分布域が重なる中南米原産のゼフィランサス Zephyranthes、ハブランサス Habranthus 等のレインリリー類にもっとも近縁であり、ホンアマリリスは同じく南アフリカに分布の中心があるハマユウ属 Crinum 、ネリネ属 Nerine 、ブルンスビギア属 Brunsvigia などと近縁である。 一般にはヒッペアストルム属との属間交配種はスプレケリア・フォルモシッシマ(ツバメズイセン)Sprekelia formosissima との交配によるヒッペアスケリア属 ×Hippeaskelia (=×Hippeastrelia )が知られているのみであるが、ホンアマリリスにはハマユウ属との交配で得られたアマクリナム属 × Amarcrinum 、ネリネ属との交配でアマリネ属 ×Amarine 、ブルンスビギア属との交配でアマリギア属 ×Amarygia が知られ、園芸植物として出回っている。 脚注
参考文献
画像
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